日本物流新聞

数々のデザイン賞を受賞したポップな爪やすり

片手でも削れるので子供からお年寄りまで使用できる

ヤスリ部分は台座から取り外しても使える

96歳の「看板娘」岡部キンさんがヤスリに命を吹き込む

爪は「切る」から「削る」へ

有限会社柄沢ヤスリ/新潟県燕市

「初爪 HATSUME」

戦前はヤスリの一大産地として栄えた新潟県燕市。だが、戦後は洋食器の生産が盛んになり、ヤスリ工場も激減。わずかに残ったヤスリ工場のうちの一軒が柄沢ヤスリだ。先代から事業を引き継いだ二代目の柄沢良子社長は、県内の高校で教鞭を執っていた数学教師。定年後に事業継承し、はじめて自社の「凄み」に気づかされた。「湾曲した面にヤスリの面を作る作業を見た大学教授が『これは企業秘密ですか?』と聞いてきたんです」。
柄沢ヤスリにとって「日常のなんでもない作業」は、他所から見れば非常に難易度の高い作業。その優れた技術力がもたらす品質は、国内外のユーザーから高い評価を得ている。
ヤスリの表面についているギザギザの部分を「目」といい、その部分を作る「目立て」こそがヤスリの良し悪しを決める。多くのメーカーの目立ては機械切りだが、柄沢ヤスリでは手切りで行う。「小型で精度の高いヤスリを作るためには、目立て職人の高い技術が重要」と柄沢社長は語る。
その目立てを行うのは、同社の「看板娘」こと96歳の岡部キンさん。普段はチャーミングな表情な振りまく岡部さんだが、作業場に入ると表情は一変。周囲が「声をかけてもまったく反応しない」という集中力で、ヤスリに命を吹き込んでいく。

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