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Opinion

大阪商工信用金庫 理事長 多賀 隆一 氏  

信金が「脱炭素」テーマに万博出展支援

大阪関西万博・大阪ヘルスケアパビリオンの「展示・出展ゾーン」へ、中小企業やスタートアップ企業377社が出展する。出展企業は、26の出展支援事業「リボーンチャレンジ」により、今後内容をブラッシュアップする。大阪商工信用金庫は「脱炭素」をテーマに同チャレンジの一翼を担う。展示期間は25年5月13日から5月19日、出展企業はウィファブリック、EX-Fusion、F.C.大阪、オプティマス、ゴイク電池、興徳クリーナー、SIRC、中村超硬の8社。多賀隆一理事長に話を聞いた。

――貴金庫は2020年から脱炭素に積極的に取り組まれていますね。

「個人的な話ですが5年前、孫が生まれまして、この小さな命が暑い大阪の夏を乗り切れるのかなと。子どもや孫達といった次世代のためにも『今を生きる大人の責任として脱炭素をやろう』と心に決めました。しかし信用金庫の力で何が出来るだろうと考えあぐねていた時、202010月、当時の菅総理がカーボンニュートラルを宣言したことに背中を押される形で当金庫も中小企業を巻き込んで脱炭素をやろうと決めました」

――信金が取引するような中小企業にとって、脱炭素はメリットが少ないという意見も。

「中小企業の社長さんに話しても、『理事長ね、コストばっかりかかって、儲かりまへんがな』という反応が来るのは当然です。大企業対象のメガバンクの取り組みでは中小企業には適さないので、いろいろ試行錯誤を一年した後、三井住友海上火災と提携して中小企業向けの脱炭素コンサルティングをまず始めました。各企業の年間のCO2排出量を算出。まず知るところから始めました。そしてやり易い省エネから提案していきました。収益ではなくコスト削減で『脱炭素は儲かりまっせ』とね。もう一つ、脱炭素に積極的に取り組む大企業と取引しているところは『御社は、年間何トンCO2排出してまっか?』と聞かれて答えられないようでは、やがてサプライチェーンから外されるかもしれない。会社を守るためにも脱炭素は必要です」

――リボーンチャレンジに参画されたのは。

70年の万博は大企業中心でしたが、25年の万博は中小企業にもスポットライトを当てようとしています。脱炭素で頑張っている中小・スタートアップ企業を当金庫から世界に紹介したいと考えました。70年の万博は日本全体にとっては成功でしたが大阪経済としてはどうでしょう。70年代大阪府は日本のGDP20%を占めていましたが今は約15%と割合が低下している。今回の万博をきっかけに中小・スタートアップ企業から世界的企業を生み出し大阪経済をけん引してほしい。金融機関ですから融資を通じての支援などいろいろな方法がありますが、可能性を秘めた企業の名前を万博で売り出してあげる。世界から注目される大きなチャンスです。そういう支援が出来ることに夢があります」

■脱炭素は「儲かりまっせ」

――出展企業は多彩ですね。核融合を目指すEX-FusionからサッカークラブのF.C.大阪まで。

「面白いところがたくさん集まってくれてよかったです。またEX-Fusionは大阪大学の技術、SIRCは大阪市立大学の技術、オプティマスは大阪府立大学の技術をベースにしています。大阪の大学の技術を世界に、というのも別次元のテーマとしてあります」

――脱炭素で果たすべき貴金庫の役目は。

「万博に出展するのは8社ですが、取引先には他にも脱炭素の技術やソリューションを持った多くの企業がいます。そうした企業を世界に発信する機会を創出したいと思っています。プレ万博的に来年早々に当金庫主催で『大阪脱炭素ビジネスコンテスト(仮称)』を実施予定です。自治体や公的機関にも協力いただけないかと考えており、いろいろアイデアを練っています。それと、去年から『脱炭素経営宣言』のお声がけや支援を取引先にして、870社ぐらいが宣言していただいた。これは補助金などの優遇が受けられるので『儲かりまっせ』につながります。大阪府下全体で6626社ほど宣言したので、貸金シェアは大阪府で1%ほどしかありませんが、宣言シェアは13%と高くなっています。また今後、脱炭素のコンサル活動を、公的なリソースも活用する形に進化させます」

――中小企業はやはり脱炭素に取り組むべき。

「より良いものをより安く、という時代は過ぎ、本当の意味でデフレを脱却するには『より良いものをより高く(適正価格)』を目指さないといけない。付加価値をいかにつけて利益率を上げていくか。中小企業にとって一番簡単な付加価値のつけ方は、この商品やこの部品は脱炭素に配慮したものです、ということ。一割高くてもそういうモノを買ってくれる世の中になっていくことを期待しています」

2024425日号掲載)