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けんかっ早いけど人が好き Vol.61

日本女性の意地

四年ぶりに東京のお台場エリアで開催されたクルマの祭典、ジャパンモビリティショーが、11月5日に閉幕した。来場者数は百十一万二千人。大成功である。

ところで、モビリティショーはとにかく歩く。なんたって展示物はクルマなので、時計やカメラの展示会とはわけが違うのだ。しかも会場は西館と東館に分かれているので、渡り廊下みたいに無駄に歩く箇所がある。となると歩きやすい運動靴で現場入りしたいところだ。

しかし、我々メディアが取材するために設けられているプレスデーには日本を代表する社長がほぼ全員やってくる。メーカーごとに時間が割り振られており、各自のブースでこれからの企業の姿勢や、新技術の発表などを行うのだ。アップルやメタ(旧フェイスブック)のトップのように、檀上に黒いとっくりシャツで上がってくれればいいものを、さすがに日本のビジネスシーンはそこまでざっくばらんなセンスは持ち合わせていない。みなさん、選び抜かれた柄のネクタイをしめ、ぴかぴかの革靴を履いて勢揃いだ。そんなところに運動靴で「ちゃーっす」と行くわけにはいかないのである。

メディアのなかには最初から白旗を掲げて運動靴を選択した人も見受けられたが、私は古い人間だ。そして、気合と根性で生き抜いてきた世代の人間である。24時間戦えますかのキャッチコピーに相変わらずなんの違和感もない時代遅れだ。つまり当然、足元に運動靴という選択肢はない。迷うことなくヒールのある革靴で参戦である。

ヒールのある靴を選ぶのには、もうひとつ理由がある。だいぶ前のことになるが海外のジャーナリストに「日本人女性は背が低い」と、見下した表情で言われたことがあるからだ。ええい、日本人だって背が高くて大股で(大股は関係ない)歩くわよ! 今回も、身長171センチに三センチのヒール。中敷きの厚みを加えるとほぼ175センチだ。そのへんを歩く外国人を雲のように見下ろす富士山の気分である。

当日の歩数は、13625歩。足は文字通り棒になったけれど、自己満足度はめちゃくちゃ高い。そして、こうした見栄なら、これからもよろこんで張るつもりである。

(20231125日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)