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「やったもの勝ち」で変化に対応

「生き延びたものが繁栄する」

これまで当たり前だったビジネスの在り方が変化している。その速い流れに対して、生産財商社である西川産業(大阪市東淀川区)の西川正一社長は「トライアル&エラー」と「やったもの勝ち」の重要性を力説する。失敗と成功事例を積み重ねることで生き延び、さらに繁栄するという考えだ。

西川産業 代表取締役社長 西川 正一 氏

■成功事例を積み重ねる

データ活用、感染症対策、ロボット導入など、産業界全体で新しい動きが加速しています。

「環境の大きな変化から新しいビジネスが生まれます。COVID19禍(新型コロナウイルス感染症)で困っている今だからこそ、新しい知恵が湧き、行動に移せる。それができなければ生き延びられないでしょう。申し上げたいのは『勝ち組』『負け組』という単純で極端な見方ではなく、『生き延びたものが繁栄する』ということ。たとえ、10回挑戦して9回失敗しても、1回の成功事例を積み重ねて、組織に横展開することで変化の連続に対応していく必要があります」

生産財ビジネスに不可欠だった直接会って提案することが難しい状況です。

「その分、オンラインでの商談が当たり前になりつつあります。提案活動の半分を移動時間に割いていたことを考えれば、時間あたりの生産性が大幅に向上しました。まさに働き方改革です。これはお客様や仕入先、メーカーにも当てはまることだと思います。当社も始めこそ、音声の不具合や段取りの悪さでご迷惑をおかけしましたが、経験を重ねるごとに下準備がスムーズになりました」

「メーカーとの打ち合わせにあたって、お客様の通信環境が整わない場合、当社の営業パーソンがノートPCを持参し、iPhoneとテザリングで対応することも珍しくありません。メーカーの担当者は、社内にいるので、素早く最適な資料を提示できるうえ、質問に答えやすくなります。一方では現場に訪問することで得られるリアルな情報の重要性、迅速なアフターケアが信頼につながることに変わりはありません。リアルかオンラインの選択ではなく、段階に応じたハイブリッドな対応で良いと思います」

■近未来にふさわしいキーワード

設備投資に明るい兆しが見えてきました。

「補助金も後押しになっています。『ものづくり補助金』は、7年前に始まった当初こそ疑心暗鬼でした。年を重ねるにつれて、モノづくりに対する国の本気度が伝わり、私も含めて中小企業の経営者のマインドと行動様式が変わりました。少ない手持ち資金を技術革新につなげるために、『手をこまねくことなく、もらえるものはもらっておこう』という心境です」

今年度は複数回にわたって、「事業再構築補助金」が実施されています。

「『事業再構築』は近未来にふさわしいキーワードです。バラ色だった航空機産業がCOVID19禍で大打撃を受けたように、先を見据えた事業変革とデジタル投資が求められているからです。そのなかには、すぐに実を結ばないものがあるかもしれません。過去を振り返ると、排水処理などの環境改善機器も、1970年代中盤まで『生産に直接関係ないから』という理由で見向きもされませんでしたが、公害問題に伴う法整備で当たり前のものになりました。この歴史から私は『時代にふさわしい機器やサービスであれば、恩恵を受けられる』と考えています」

顧客の事業再構築に向けて、生産財商社の役割も広がってきそうです。

「私たちの業界は、以前から課題解決に対するトータル提案を進めてきました。それはこれからも変わりません。ただ今後は、コンプライアンスの遵守が一層重要性を増すでしょう。商慣習のなかでグレーゾーンだった部分を見直すときが来ています。許認可に対して無知であってはならない。確かに面倒な部分もありますが、そこから新たな気付きもあります。そういう点でも『やったもの勝ち』ですね」

■トライアル& エラーと決断

自然災害などの緊急対策にも力を入れています。

「当社は、拠点ごとに全社員の食料3日分と日用品を備蓄しています。BCP(事業継続計画)も定期的に見直し、緊急時対応のルールづくりに努めていますが、正解はないと思って用心しています。これもトライアル&エラーです。自然災害も含めた緊急時対応の整備は新しいビジネスとしても十分成り立ちます。社会的責任を果たす意味でも、お客様の復旧期間を短くするお手伝いができればと考えています」

中小企業がトライアル&エラーに挑戦するうえで必要なことは。

「経営者の決断と失敗しても揺らがない財務内容です。余裕がなければ、失敗したときのことばかり考えて実行に移せない。それでは成功事例は生まれません。日本のモノづくり企業は、堅実な経営で変革に取り組まれてきましたから、資金調達もしやすいはず。『やってみなはれ』の精神で、チャレンジできるかどうかが生き残りを左右すると思います」