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宮川工業 取締役 営業部長 藤井 崇 氏

橋梁・造船向け鋼材加工のニッチトップ集団

橋梁に使われる巨大で丈夫な鋼板に、超硬ドリルの専用機で難なく孔をあける。あるいは橋梁や造船で使われる鋼材を、自走式のR面取り機で自走面取りする。「多軸の宮川」の代名詞で知られる宮川工業だが、実はこうした橋梁や造船に特化した鋼材加工機のニッチトップ企業だ。橋梁・造船向けR面取り機のシェアは推定8~9割と圧倒的。取締役営業部長の藤井崇氏は「現場にグッと入り込んだことで今がある」と分析する。

――多軸アタッチメントで有名です。なぜ橋梁向け鋼材の孔あけガントリー機を手がけるように。

「我々は刃物の町・岐阜県関市が発祥。元は包丁を生産していました。包丁の柄に2カ所の孔あけが必要で、社内設備として開発したのが主力の多軸アタッチメントのルーツです。翻って橋梁に使う鋼板の接続には無数の孔あけが必要で、そこへ得意の多軸を提案。紆余曲折を経て、最終的には1軸の超硬ドリルを持つ専用機で高速孔あけを自動で行う今の形に落ち着きました」

――孔あけガントリー機の概要は。

「対象ワークは長手方向がおおむね10㍍を超えるような大板。サイズも剛性も汎用機では足りず専用機でしか孔あけできません。安全柵を含めた設備全体のサイズ感は10×40㍍相当の大型装置。主軸ヘッドがXY方向に自動走行し、超硬ドリルで高速に孔をあけます。鋼板のずれを認識し自動補正する機能により、ワークセットはラフでも問題なし。操作は簡単で夜間無人運転も可能です。導入実績は橋梁ファブリケーターや鋼材業者などで累計百数十台。今は更新需要が主ですが業界一のシェアを誇っています」

――橋梁・造船向けR面取り機も展開しています。

 「橋梁向けの鋼材は角が残ったままだと塗装が剥がれて錆びやすく、面取り機によるR面取りがルール化されました。造船もバラスト水に触れる鋼材はR面取りが必須。我々は橋梁や造船に特化した仕様のR面取り機をハンディタイプと自走式のどちらも提供しており、今では橋梁・造船業界で8割以上のシェアを握っている手応えがあります」

――圧倒的シェアを獲得できた要因は。

「現場への踏み込み方が他と違ったんじゃないかと思いますね。様々な商材を扱うメーカーと異なり、我々は橋梁と造船という特定の業界の中の孔あけ、面取り加工にどっしりと入り込んで特化した製品開発を行った。毎日通っては不満を聞き出し、保守サポートも地道に積み重ねました。かけたパワーが評価として返ってきたと思っています。お客様や販売店様にも『宮川に任せれば大丈夫だろう』と安心いただけているのかと」

――自走式R面取り機は独創性の高い製品です。

「国内で自走式を手掛けるのは我々だけ。特に直線モノの鋼材が多い橋梁向けで活躍しています。造船は使う鋼材が多岐に渡るためハンディが多く使用されていますが、今後はこの潮目を変えたいとも思います。造船業界は人材確保に苦心されていますが、自走式はセットさえすれば自動で面取りが可能。我々も難題の解決に協力すべく、自走式の認知を広げ、また新たな商品開発に力を注いでいます」

――開発力の源泉は。

「我々の工場は主に組立工場。企画・開発・設計・組立・品質管理・保守・サポートをしており、部品の製造は主にパートナー企業に外注しています。設計・開発が会社の肝です。現場にグッと入り込み、そこで聞いた声を形にする。面取り機はその典型です。今後もよりバリエーションを増やし満足度を高めていきます」

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自走式面取り機はセットさえすれば鋼材の直線部、内径部を自動で面取りする

(2023年12月25日号掲載)