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長谷川工業 長谷川 義高 副社長

職人の「かっこいい」を応援

長谷川工業が2009年にリリースした踏み台「lucano(ルカーノ)」は機能性と意匠性が高く評価され、世界各国のプロダクトデザイン賞を受賞。17年には、ルイ・ヴィトンが直営店全店舗に採用、18年には人気アパレルブランド・シュプリームとのコラボレーションを果たすなど大ヒット。また「BLACK LABEL」などで差別化が難しいはしご脚立業界で唯一無二のブランドを確立。デザイン戦略を含め様々な施策で売り上げも70億から約110億へ伸長した。プロダクトデザインの陣頭指揮を執る長谷川義高副社長に、製品開発のこだわりや新たに展開している「BLACK LABEL」について話を聞いた。

人手不足解消の一助に

――創業以来、はしごと脚立のパイオニアメーカーとして、数多の現場の足元を支え続けてきた長谷川工業が意匠性にこだわった商品開発を進めたきっかけは。

長谷川 私が入社した2005年は価格競争がし烈で、社員全員が懸命に働いても利益に結び付かない状態が続いていました。品質や機能はどこにも負けない自信がありましたが、ユーザーからはどれも同じように見えてしまうので「安いほうがいい」となってしまいます。そこでデザインにこだわることで差別化しようと考えました。色を変えるというのは既存リソースを活用できるので、すぐに取り組めます。シルバーの脚立を黒のアルマイトに変えたのが始まりです。

――脚立「CROCO(クロコ)」ですね。

長谷川 撮影でスタジオを訪れた時に、ラッカー塗装で黒に塗られた脚立を見かけたのがきっかけです。スタジオでは、剝き出しのアルミ地では光が反射してしまうという理由で塗装したそうです。百貨店やホテルなど、高級感や雰囲気まで含めて顧客へのサービスとしているところでは、電球交換やディスプレーを変える作業も見られていたりSNSで取り上げられたりします。クロコはこうした新しい需要を捉えました。黒の脚立やはしごだとシルバーより目立たないだけでなく、細部まで気を配っていることも伝えられます。

――そこから「BLACKLABEL」へ発展していった。

長谷川 クロコは既存品の色を黒にした単品商品で、より強力なラインアップが必要でした。そんな折、マーケティングチームからシリーズとして展開できる製品開発の提案があり「それはいいね」と。クロコから13年を経て21年に「BLACK LABEL」が発売されます。職人さんの世界だけでなく、広告業界も含めて黒がブームとなっており「BLACK LABEL」は目標比30%増の好スタートを切り以後、機種を増やしながら、順調に売り上げを伸ばしています。ただ、製品を黒にする、というだけではブランドを確立できません。機能や使い勝手で優位性がある製品を映えさせるために黒をモチーフにしていますし、そういうものだけをラインアップに加えていきたいですね。

――デザインにこだわるのは職人を応援したいという想いも。

長谷川 デザインに力を入れる根幹は、現場の職人さんに「かっこよくいてほしい」「誇りを持ってほしい」という想いです。そして、かっこいい道具を手に仕事をしている職人さんを見て若い人が「自分も職人になりたい」と憧れをもってほしい。世界有数の技術を持つ日本の職人さんの技術継承や人手不足の解消に、かっこいいはしごや脚立で少しでも貢献できればメーカー冥利に尽きます。

――脚軽も職人の要望から生まれた商品だが。

長谷川 旧来の当社の製品特徴は「重くて頑丈」でした。「重いね」と言われれば営業社員は「重いから安全です」「重いから堅牢です」と営業トークをしていました。「とにかく軽くて丈夫な脚立がほしいんや」という職人さんの声が多くあるのなら応酬話法で乗り切るのではなくちゃんと「軽くて丈夫」なものをつくろうと。徹底したユーザー調査を踏まえ「脚立専用」とすることで耐久性を確保しながら従来の脚立より最大30%の軽量化(同社製品比)に成功しました。ユーザーのお役にたてる、これまでにない製品を完成させても手に取ってもらえないと意味がありません。いい製品をつくれば売れる、のではなくいい製品だから手に取ってもらうためにデザインが重要になってくる。これまで、我々の業界では取り組みが遅れていた部分でしたね。

――しゃがむ必要がなく伸縮操作が行える「シャガマン」も。

長谷川 「立ち上がれヒーロー(職人)たち」というキャッチコピーからもわかるように日々の戦い(現場)に曲げない姿勢で立ち向かう職人さんを支える製品です。それを表すためアメリカンヒーローっぽい「シャガマン」というキャラクターも作りました。このキャラクターも含め、近々に新しい動きがあるので乞うご期待ください。

――最近のお勧め商品は。

長谷川 デザインという視点でいうと「脚立ソックス フィット」は面白いですよ。これまでは巾着タイプしかなく「おしゃれは足元から」ではないですが昨年、1111日(靴下の日)に発売しました。施主が立ち会う作業などで装着することで「こんなところまで気を使って作業してくれている」とイメージアップにつながると人気です。デザインだけでなくフィット性や脱着のしやすさなど機能性もアップしています。

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脚立ソックス フィット

(2024年2月25日号掲載)