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三和シヤッター工業 ソリューション事業本部 環境エンジニアリング事業部 事業部長 村井 丈夫 氏

断熱性能持つ高速シートシャッター拡販

倉庫や工場で欠かせないシャッター製品で国内トップシェアを誇る三和シヤッター工業。堅調な建設需要の後押しだけでなく、防災や環境など時代に合った新商品の開発も相まって業績を伸ばし続けている。その強さの源泉を三和シヤッター工業・ソリューション事業本部環境エンジニアリング事業部の村井丈夫事業部長に聞いた。

――昨年9月に発売した「断熱クイックセーバーTR」を拡販しています。

「『断熱クイックセーバーTR』は業界で初めて高速シートシャッターに高い断熱性能(サッシ断熱性能等級H-5相当〈熱貫流率:215W/m2K)〕〉)を付加した商品。高速・高頻度開閉が求められるシートシャッターは、それに耐えられるだけの耐久性が絶対条件。本商品は独自開発のシート内部にアルミ箔に張り付けた2層のエアキャップ(断熱空気層)を入れたカーテンポケット断熱構造からなり、設計耐用回数50万回と耐久性も申し分ない。現在、工場や物流関連のお客様と、倉庫の中でも特に冷蔵倉庫関連のお客様に積極展開している。市場で唯一無二の商品であることもあり感触は非常に良く、引き合いも強い」

――そもそもシートシャッターになぜ断熱性が求められているのでしょうか。

「物や人の移動が頻繁にある工場や物流倉庫などでは、多くの場合、開口部を解放したままで運用していることが多い。屋内が常に外気温にさらされた状態のため夏は暑く冬は寒い。本商品を用いれば屋内の温度を保つことができ、これまであまり設置効果が見込めなかった冷暖房機器を導入できるなど職場環境改善に繋がる」

――冷蔵倉庫ではどのようなメリットがある

「断熱機能があるので庫内温度の適切なゾーニング管理や空調設備の消費エネルギー低減に役立つ。また、これまで0℃~15℃程度の冷蔵倉庫では開閉時の温度差によってシャッター表面が結露し、その水滴が凍ることで開閉の邪魔をしたり、氷がシャッター下部に溜まってしまうことなどから活用が進まなかった。本商品は断熱素材によって結露の発生が抑えられ、これまで使用できなかった領域での活用も見込める」

■製造~メンテ、一貫提供が強み

――環境性能について「年間エネルギーロス85%削減」など具体的な数字を示しています。シャッター分野ではあまり見られない数値ですね。

「省エネ・CO2削減に寄与する高断熱商品・サービス『Re-carbo(リカーボ)』シリーズでは条件ごとのCO2削減量を明示している。これまで、シャッター分野でCO2の削減効果を明示することは算出方法が無かったためできなかったが、当社独自の算出方法を定めることで、有効性を具体的に示すことできるようになった」

――様々な商品があるので営業の提案力が求められそうです。

「当社は設計・製造から販売、施工、メンテナンスまで一貫した事業展開を行っていることが大きな強み。全国各地に300カ所以上の営業所があり、24時間365日、電話一本でお近くの拠点からサービスマンが駆けつける『フルタイムサービス(FTS)』を提供している。また、設置後の保守・点検だけでなく、修理や部品交換の案内、あるいは将来に向けた更新提案などを通じて、お客さまとの良好な関係の維持にも繋がる。更には、当社の欠かせない収益基盤にもなっている」

――サービスは人件費や人材確保など難しさもありそうです。

「当社としては、お客様の大切な建物や資産を維持・保全するための修理・メンテナンスサービスを提供することは使命であると考えている。また、サービスの収益性は比較的高く需要も安定しているので、経営基盤としても非常に重要なポジションとして位置付けている。一方で、このようなサービスを継続的に提供するためには、人手不足の解消が課題であり、若手の育成や全国に4000人ほどいる施工技術者の拡充を進めている。これらの取り組みにより、倉庫の新設や再開発案件などが増加する状況下においても、求められる納期にしっかりと対応でき、お客さまにも安心していただける。そのようなことが当社の強み・付加価値となっている」

――今後の展開についても教えてください。

「当社は3つの柱(防災、環境、IoT)に力を入れている。そのひとつとして、2年ほど前から環境対応商品の開発を重点的に進めている。その中で、断熱クイックセーバーTRだけでなく、昨年3月に業界で初めて80㍉の厚さを持つパネルを採用した『高断熱オーバースライダー』など新たな商品も拡充している。地球環境の問題だけでなく、外気温の上昇から商品を守るためにも庫内の温度管理が重要になっている。更なる商品開発を進め持続可能な事業展開の一助となる商品を提案していきたい」

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断熱クイックセーバーTRは業界初めて断熱性能を付与した高速シートシャッター

防水商品(ウォーターガードシリーズ)需要増

2019年の多摩川氾濫以降、需要が増えているのが防水シャッターや防水ドア、防水板などの防水関連分野だ。多摩川の氾濫ではマンションの機械室に水が入り込んだことでエレベーターや給水機能が停止した。長野県でも浄水場・配水場に土砂が流れこんだことで断水が発生するなど、生活インフラを守るためにも基幹施設の防水化が求められている。

上下水道施設やごみ処理施設などでは予防的に防水対策商品を導入する事例が増えており、マンションでも再開発事業を含む新築案件やリニューアル案件で導入されやすくなっている。「防水対策は生活に直結するため、マンションを買う側の関心も高い。作り手である当社としても、売って終わりではない。もしもの場合に備えた提案が結果として付加価値を生む」と村井氏は話す。

2024325日号掲載)