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最終研削工程を自動化

岡本工作機械製作所 取締役常務執行役員 渡邊 哲行 氏

研削盤と半導体製造装置を製造販売する岡本工作機械製作所は昨年来、絶好調だ。中国や北米で研削盤の販売を伸ばしており、難しいとされる最終加工工程の自動化に様々な機能を付加することで挑んでいる。

――工作機械や半導体関連の市場が高水準で推移しています。この好調はいつまで続きますか。

「日工会の稲葉会長が年頭に発表した今年の受注見通しは16500億円。これを達成するには月間約1400億円ペースが必要で、私もこれぐらいで今年は推移するのではないかと思っています。当社も製造販売する半導体製造装置はSEMIの需要予測によると、近年5%成長を続けており来年まで右肩上がりを維持するようです。工作機械業界は半導体の動きに引っ張られます。一部、中国における減速傾向はあると思いますが、当社の工作機械全体の約30%を占める中国向け受注は好調です。2021年の当社の内需は前年比70%増でしたが、外需は120%増となり、外需割合が非常に高い結果でした」

――外需を引っ張る地域は。

「やはり中国と北米です。この2地域は好調だった18年に比べても50%増でした」

――好調の背景には何が。

「半導体製造装置に使われるテーブルやシリコンウェーハを吸着する静電磁チャック、セラミックス部品の加工等に研削盤が必要になります。EVに使われるモーターコア金型には3㍍幅の平面研削盤が使われます。また自動運転に絡んではレンズやセンサー用の電子部品金型の需要が増えてきます。ただし金型の場合、1つの金型で何万という部品が作られるので量産部品の加工は少なくなり、必要とされる機械の数は減少しますが、高精度化すると予想されます」

――需要についてネガティブな要素はありますか。

「工作機械業界としては自動車向けがなかなか伸びません。去年も不調でした。また昨今ニュースに取り上げられている通り、半導体不足から発生する電子部品供給不足もあり、工作機械需要に対する供給が間に合うかが今年のポイントとなると思われます」

■新製品で市場開拓

――貴社のイチ押し製品は。

「当社は2018年あたりから国内外向けにダブルコラムの門形研削盤に力を入れています。従来の砥石軸を片持ちで支えるシングルコラムより剛性があります。新しい門形研削盤の市場もできてきて、先ほどのモーターコア金型や半導体製造装置の部品をつくるお客様に導入していただいています」

――高精度・自動化機能も充実させています。

「研削盤も機上測定の時代になり、機上計測装置を付けています。計測という名称ですが、実際には加工開始点の位置決めにも活用を行うことができ、自動化にも大きく貢献しています。また、研削加工の能率をもっと高めようと、加工物の高い位置をタッチプローブを使って自動で探し出し、高い位置から等高線のように削るソフト『MAP研削』も開発しました。加工物の形状は厳密には反りやうねりが存在しており、高低差があると空気を研削する箇所『エアカット時間』をいかになくせるかで加工時間に影響してきます」

――海外メーカーの台頭を意識されますか。

「近年、平面研削盤メーカーは台湾や中国で成長をしてきていますが、高精度・付加価値といった点ではまだまだ欧州・日系企業が強い状態です。海外メーカーと当社の違いでは、個別ニーズを伺って汎用機・NC機・専用機と提案を変えていること、売り切り商売ではなく世界中にあるサービス拠点と代理店網でサポートしていることと感じます」

――今年は4年ぶりのリアルJIMTOF開催となります。

「平面・成形研削は製造現場の最終工程となるため、、要求精度は厳しく、自動化は難しいと言えます。内面・円筒研削ならロボットやカントリーローダーを使ってできますが、平面研削ではチャッキング方法が異なるため、まだまだ進歩の余地があります。そこで、今年のJIMTOFでは一歩踏み込んで高精度仕上げのロボット付きを出そうと考えています。量産向けでなくいま流行のフレキシブルな自動化です。通常では当社の特別オプションとされている砥石交換やワーク自動交換等も積極的にカタログ提案をしていくつもりです。また新しいジャンルの研削盤となるグライディングセンタや立形ロータリー研削盤等の新製品開発によって新市場開拓を目指します」

9面モノづくり特集リレーインタビュー(5)岡本工作機械製作所P2.jpg

ダブルコラム方式の門形平面研削盤「UPG3010CHLi

2022310日号掲載)