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オーケイエス社長 大神田 佐敏 氏

新 治具交換システム9月発売、少量・多品種生産をサポート

治具交換装置「ベビーカンガルーシステム」の設計・製作を中心に、工作機械を含むシステムエンジニアリング、治具製作の3つの事業を展開するオーケイエス。国内を中心に販売し、北中米、タイ、ベトナム、インドネシア、インドなどアジア各国にも販売してきた。自動化は世界で需要があり、来月発売する新製品でさらに弾みをつける考えだ。

おおかんだ・さとし 1958年東京都足立区生まれ。明治大学工学部機械科卒業後、日立精機に実習社員として3年間、機械加工・組立・設計・電気制御を学んだ後、オーケイエス入社。1996年から現職。学生時代にバンドを組んでいたことから、趣味はキーボードやオークションで入手したビンテージのハモンドオルガン(トーンホイール式)を弾くこと。「学生の頃のようには指が全然うごかなくなりましたけど、続けていると冨田勲さん(作曲・編曲家、シンセサイザー・アーティスト)とお会いできたりと嬉しいこともありました」

-今年度の貴社の受注環境と今後の見通しは。

「昨年度(7月決算)の売上高はコロナの影響を大きく受けコロナ前比で約20%減でした。細かな打合せがしづらかったので、お客様は設備投資計画を進めにくかったことが大きい。8月からの2022年度は現在の受注残で21年度の売上高まで到達しています。コロナ前の状況に戻せる見通しです」

-新製品を発売されます。

「新ベビーカンガルーシステム『BKS-FSC with Co-ROBOT』は予定より半年遅れの9月発売の予定です。この製品シリーズはワークが載った治具プレートを手動で順送りに搬送することで、段取りロスを最小化します。新製品は通常人がプレート交換する作業を協働ロボットが担うことで、たとえば今まで一人が2台の加工機を担当していたものを3台以上もたせることができます。協働ロボットは動きが少し遅い代わりに多品種対応できます。治具を交換するのでワーク品種が変わってもロボットのプログラムをあまり変える必要がありません」

-ベビーカンガルーシステムはこれで何種類になりますか。

「標準タイプ、AGV、クレーンレス(パワーアシストを用いて重い治具にも対応)、ロボキット(ロボットを使って治具プレートを交換するキット)、協働ロボット用の5仕様になりました。ただ、個々のお客様のニーズを聞いて特殊仕様としたり、工作機械ごとのカスタマイズがあるので新しい機種を毎年10種類以上開発しています。フィリピンに設計会社をつくったのは膨大な開発に対応するためです」

マテハン特集7面インタビュー・オーケイエス大神田佐敏社長P2.jpg

BKS-FSC with Co-ROBOT

■外段取り化で機械稼働率アップ

-新製品のターゲット層は。

「部品加工をされている工作機械ユーザーさんで、作業者が機内で段取り交換されているお客様が対象になります。これを外段取りに変えれば機械の実稼働率が上げられます。多品種の加工ラインに向き、どちらかというとターゲットは自動車分野よりも一般産業機械や半導体関係など生産数がそれほど多くなく品種が多い分野。小さな機械だとクレーンが中に入らず、治具交換するのがすごく大変です。ベビーカンガルーシステムを使えば、手前に引き出すだけで治具が簡単に交換できます」

-販売目標は。

「シリーズの販売数が大小あわせて年間50セットくらいなので、新製品だけで年に10セット。シリーズで合計60セットを目指します」

-システムの大きさは案件により差がありそうです。

 「一番小さい200万円台のものから大きいものは億単位まであります。小さいものは30番の機械に付けて簡単に組めるもの、大きいものは機械510台を組み合わせたシステムや大型工作機械用になります」

DX(デジタルトランスフォーメーション)など新たなニーズに対応されますか。

「当社は3D化対応を2003年に開始し、今は開発設計をすべて3Dで行っています。3D化で一番重要なことは標準モデルをひな形としてデータベース化することで、スキルの高い設計者しかできなかったことが若手でもできるようになります。3D化でオフラインでの事前シミュレーションも可能となり、たとえば強度解析を行い必要な強度と構造を最適化しています。これを今後どう発展させるか。お客様の工場で3Dのモデルと現物を見比べるかたちにして、次はこうしてくださいと確認出来るようデジタルツインにも取り組みたいですね」

-今後の目標は。

「大量生産のラインは自動化に対し大きな問題はありませんが、少量、中量、多品種生産になるとベテラン作業者でないとなかなか対応できないケースがあります。これをより簡単に行えるようにサポートしていきたい。多品種対応の自動化はDX化が必須ですので3Dの展開からDX化にも貢献したいと思います。EVの拡大で部品加工工場はこれまで以上に多品種と小ロット対応が重要な課題となります。そのための手軽で効果の高い手段としてベビーカンガルーシステムを提案していきたいですね」

(2022年8月25日号掲載)