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カシフジ 営業部 部長 尾崎 博史 氏

ホブ盤と歩んだ110年、新たな歯車ニーズに新機種で攻勢

創業110年を迎えるホブ盤のトップメーカー・カシフジ。自動車業界と共に成長してきた同社だが、EV化に伴い求められる歯車の工法にも変化が生じていると言う。一方で自動化ニーズにより、ロボット等の精密減速機に使う歯車の需要も伸長。JIMTOFでは一挙3機種を披露し、こうした新たな潮流を追随する。

営業部の尾崎博史部長。趣味をたずねると「あらゆる機械いじりです」と笑うも、そのレベルは完全に玄人の域。人が乗って走れるミニSLを自作するなど機械構造に精通している

――需要に占める業界ごとの割合を教えてください。

「台数では自動車向けが約50%。売上ベースではもう少し割合が減り、自動車関連の設備投資は少し落ちついている印象です。逆に比率を高めているのがロボットやAGVなどの自動化関連の受注です。ロボットは各関節に精密な減速機を搭載しており、より高精度な歯車加工機を求める需要が伸びています。また自動車も含め『電動化』が急速に拡がる中で、歯車加工機に求められる要素が変化しています」

――どういった変化ですか。

「これは電動化するすべての歯車に通じて言えますが、静粛性と伝達効率の向上が求められます。例えば、焼入れ前の搬送時などに歯車同士がぶつかると歯面に打痕が生じ、そのままでは騒音の原因になります。修正しようと研磨加工するなら、本来は歯車研削盤が必要ですが、機械は高価。それに代わる簡単な歯面仕上げ盤として、『KGH250』を開発しました」

「『歯形・歯すじ・ピッチ精度に変化を与えず、面粗度向上による差別化を図りたい』。そういったユーザーがターゲットです。面粗度を上げ、歯面を滑らかに仕上げれば、歯車の静粛性を高め伝達効率が向上します。歯車研削ほどコストをかけず、静かで高品質な歯車を作りたいこのニーズは今後ますます増えると考えています。そしてもう一つの大きな変化は、部品を一体化し、強度を保ちつつ小型・軽量化を図る動きが活発になりました。そうなると増えるのが段付き歯車ですが、工具の干渉で従来工法では加工できない場合があります。そうした一体型の部品がかなり増えていますね」

――段付き歯車に対応する歯車面取盤をJIMTOFで発表されました。

「『KD250C型面取盤』です。これはバイトを使った『キツツキモーション』というのが特徴で、機械式だった従来機をNC化し、動きに自由度を与えました。カッターの旋回角度を自在にできることで、ハスバ歯車の加工も従来機に比べ、きついネジレ角の歯車諸元も加工可能になりました。国内市場では、生産ラインに採用する面取加工はフレージング加工(塑性加工による歯車の面取加工)で、この工法の短所は歯面に盛り上がりが生じることです。盛り上がりがあると歯車研削やホーニング加工時に砥石に損傷が発生し、最悪の場合は破損につながります。だからこそ、フレージング加工後にシェービング加工を行い、その膨らみを除去します。しかしできるだけ工程を省きたいのがユーザー心理。そこで当社は、バイトによる歯車面取加工ができるKD250Cを開発しました」

――後工程に負担をかけない設備開発を行ったと。

「例えばJIMTOFで新型のホブ盤『KN81』を出展しましたが、これは荒ホブ切りに加えフレージング加工も1台で完結できます『フレージングによる歯面の盛り上がり』も、KN81ではもう一度、高速ホブ切り(仕上げホブ切り)で取り除くことが可能です。KN81なら焼入れ前の全工程を集約し、かつ後工程に負担もかけません。求められる歯車の形状や要求精度に合わせて、工法も変わらないといけないわけです」

――2023年に創業110周年を迎えます。ホブ盤のトップメーカーとして信頼を集める理由をどう考えますか。

「我々は昭和30年代はじめに全自動の国産ホブ盤を日本で初めて開発し、自動車業界の発展を支えてきたと自負しています。自動車メーカーでは24時間機械が動きます。当社の機械は、その環境下で20年・30年、精度良く稼働するのが当たり前になっています。半世紀前の機械の修理依頼が入ることもザラにあります。機械部品のほとんどを内製し、購入品にも厳しい品質検査を行う姿勢が長寿命と信頼につながっていると思います。それがカシフジの考える『ものづくり』です」

KD250C_main.jpg

独自の「キツツキモーション」を進化させた歯車面取盤「KD250C」。NC化したことでカン・コツに頼らない加工が可能に

株式会社カシフジ

1913年創業、従業員数220

京都市南区上鳥羽鴨田町6番地

ホブ盤やギヤスカイビング盤、ホブ刃溝研削盤、歯車面取盤など各種歯車加工機を製造・販売

2023年で創業110年を迎える歯車加工機の老舗メーカー。1918年に国産初のホブ盤を開発し事業の基礎を築くと、1956年には国産品として初めて全自動のホブ盤を開発。日本のモータリゼーションの陰の立役者として、ホブ盤のトップメーカーとしての地位を固めていった。1979年に業界で初めてホブ盤をCNC化したのも同社。台数ベースでは現在も自動車向けが約半数を占めるが、協働ロボットやAMRなど、自動化設備向けの歯車加工機の需要も高まっている。


(2022年12月25日号掲載)