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扉の先78/国際ロボット展から【前編】

バッテリー運ぶ大型ロボ、AGV×協ロボの有効利用

東京で12月2日までの4日間開かれた第25回国際ロボット展は昨今の人手不足ニーズに応える数々のソリューション発表の場とあって、コロナ禍前の第23回を7千人上回る14万8125人(速報)が来場する賑わいを見せた。協働ロボットは可搬質量を高めたり食品分野に対応したりしたタイプが登場。産業用ロボットはEV用バッテリーやギガキャスト成形品の搬送を想定した大型がその迫力で会場を沸かせた。海外出展者で最も多かった中国メーカー(50社)の台頭も印象づけた。

自動車サイドパネルを運んで設置するファナックの500㌔グラム可搬の「M-950」

最大ブースを構えたファナックはギガキャストの広がりを意識した500㌔可搬のロボット「M-950」を出品。このクラスで背面に2本見られるアームを1本にしたシリアルリンク機構の採用で、「可動範囲を2.5~3倍に広げ、周辺機器との干渉を避けられる」と言う。ラックにかかった、揺れ動く自動車サイドパネルをビジョンセンサーでその傾きを把握して掴んで運び、設置して見せた。

安川電機はEVバッテリーの搬送用に1㌧可搬のスカラロボット「MOTOMAN-ME1000」を紹介。同社でスカラ型は数㌔可搬しか扱いがなかったが、この用途で開発を進めたところ、省エネ性(同クラス機に比べモーター容量を60%削減)や省スペース・小型化(設置面積と質量を40%低減)を考慮するとこのタイプにたどり着いたという。来年2月の受注開始を目指す。

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EVバッテリーを運ぶ安川電機の1㌧可搬スカラロボット「MOTOMAN-ME1000

剛性と軌跡精度の高さをウリにするKUKA Japanもバッテリー搬送用に640㌔可搬の「KR640 R2800-2 Ultra」を紹介。大型機の腰の位置にあり、アームを後ろに引くカウンタ・バランスシステムを左右の2つに増やし、「ユーザーさんが嫌がる、ワークがプルプルするのを防いで安定性を高め、動きは滑らかにした」と言う。

■協働ロボットは高可搬、易操作に

協働ロボットでは世界最大手のユニバーサルロボットが3~20㌔だったラインナップに30㌔可搬の「UR30」を世界初公開した。アームを円筒形でなくテーパーのある形にしたことで堅牢性と軽量化を実現。「他社の同クラス機の質量は100㌔を超えることが多いが635㌔に抑え、設置面も小さい(据付径245㍉)ので壁や天井にも設置できる」のがウリだ。

一般的なものより1軸多いKUKA7軸制御ロボットは操作が難しく1千万円ほどと高価だが、機能を削ぎ落し価格を半減した6軸の「LBR iisyシリーズ」(11㌔、15㌔可搬)を出品。限定機能とはいえ6軸すべてにトルクセンサーが付くのは変わらない。

中国における協働ロボット出荷台数首位のDOBOTは、可搬質量3~20㌔の「CRA」シリーズを出展。人と衝突する前に停止する「セーフスキン」機能、簡単にハンドティーチングできる「録画機能」など導入しやすく扱いやすい機能をアピールした。

協働ロボットとAGVの有効な使い方も実演で示された。山善のTFS支社はSIerと協業し、協働ロボットを設置したこたつ型の台の下にAGVが潜り込み、台を持ち上げて2つの作業台を往復するデモを披露した。AGVとロボットの一体型ではないので「価格を抑えられ、協働ロボットとAGVの柔軟な機種選定が可能になる。AGV使用台数の最適化にもつながる」といくつもの利点を挙げる。来年以降の発売を目指す。

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山善は協働ロボットを設置した台の下にAGVが潜り込み、台を持ち上げて2つの作業台を往復するデモを披露した。

豊電子工業も同様にロボットとAGVを組み合わせたフリーロケーションシステムを実演した。数年前から提案を始め、産業用ロボットを使った3システムを自動車・重機分野に納入したという。

ダイヘンは台車タイプ協働ロボットパッケージを初出展した。カメラで撮影するだけで教示できるのは業界初。「撮影後、溶接点を選択するだけでロボットが稼働する。ロボットが溶接している間に、また別のワークを撮影して作業を進められる」(担当者)と並行作業できるメリットを訴えた。

20231210日号掲載)