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けんかっ早いけど人が好き Vol.62

宇都宮ライトライン

四時半に起きて新幹線で宇都宮に向かった。そこまで早く起きて行く必要はないのだが、なんとなく気がせいて向かってしまったのだ。目的は、ライトライン。そう、75年ぶりに日本で新たに走る路面電車である。路面電車といってもライトラインはデザインがかっこいい。車両の床は低くてバリアフリーだし、3両つながって大量輸送ができるこの乗り物は、LRT(ライト・レール・トランジット)というカテゴリーになるらしい。

黄色いボディカラーが青空に映える。

鉄道ファンではないものの、以前した告白のとおり鉄の塊にメロメロな私としては乗らないわけにはいかないのだ。これまでも札幌、富山、松山に広島、長崎とあちこちの路面電車に(仕事やライブ行脚のついでに)乗ってきたわけだし、ライトラインもはずせないのである。

宇都宮駅に降り立つと、何年かぶりに訪れた東口のあまりの変貌ぶりにびっくりした。以前は東口の周辺は古臭くて(失礼)、なにもなくて(本当)、そんなところにぽつんと餃子の像が立っていた(なぜ?)だけなのに、今や家電量販店やら病院やらのビルが美しく立ち並んでいる。このときばかりは、浦島太郎の気持ちが本気で理解できた。そんなところに、鮮やかな黄色い車体のライトラインが、真っ青な空をバックにするすると走ってきたではないか。うおー!

興奮して写真を撮りまくる。もっと仲間(鉄道ファン)がいると思っていたのに、そんな怪しい人間は私ひとりだ。そう、開業から数か月、宇都宮市民にはすっかり馴染みの乗り物になっていたのである。ボックス席の窓側に座り、窓の外を嬉々として眺めていると、ナナメ前に座る人の視線に気づく。どうやら大きな窓から朝陽が差し込んでまぶしいためにシェードを下げたいようだ。しかし、興奮しきった中年おばさん(注・私)が外を眺めまくっているのであきらめた様子だ、すまぬ。

宇都宮東口駅から終点まで48分、四百円。つまり八百円で往復2時間近く楽しめる。なんてお手軽なアトラクションなのだろう。重機の方が好きな私としては、このように気楽にショベルカーやトラクターを乗り回せる施設を作ってほしいと心から願う。かくなるうえは技術を磨いて、工事現場デビューしようかと本気で思い始めている。

20231210日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社