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ジダイノベーター Vol.5/プラットフォーマーは物流に攻勢

ラピュタロボティクス、多様なロボット動かす共通基盤を創造

今春、64億円超をゴールドマン・サックスらから調達し、世間の耳目を集めたスタートアップ・ラピュタロボティクス。モーハナラージャ・ガジャン代表取締役CEOは、「ロボティクス・プラットフォームでロボットの活用環境にさらなる柔軟性を与えたい」と力を込める。2014年設立で、調達資金額は累計約106億円。同社への期待値は数字からも窺い知れるだろう。

現場で人と協働するラピュタPA-AMR

チューリッヒ工科大学で博士号を取得し、東京工業大学で学んだ経験を持つスリランカ出身のガジャン氏は、起業の舞台に日本を選んだ。「高齢化の進む日本はロボット需要が高く、様々なパートナーシップも組みやすい」(ガジャン氏)。ロボットのハードでなくソフトを軸にした開発を進める同社は、日本の環境でクラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」をリリースした。

rapyuta.ioは、端的に言えば多種多様なロボットを制御するための共通基盤だ。メーカーや機種によらず様々なロボットを1つのプラットフォームで動かせれば、ロボット導入や運用の柔軟性は飛躍的に上がる。そうした目線でプラットフォーマーとして歩みを進める同社だが、19年からは新たに物流分野に注力を始めた。

「ピッキング用のAMR(自律走行搬送ロボット)『ラピュタPA-AMR』とrapyuta.ioを組み合わせ、サブスクリプション形式で提供します。ピッキングオーダーをrapyuta.ioAMRに割り当て、AMRが自動でピッキング場所に先回り。人はそこに移動して画面の指示通りピッキングを行います。人の歩行距離を減らし、3K(きつい・汚い・危険)な作業に従事する方がクリエイティブな仕事に従事できます」(ガジャン氏)

ラピュタPA-AMRが他社製品と異なるのは、AIを用いた群制御を実装する点。AMRが相互に通信し最適な形でタスクをこなすことで、多数のマシンが狭いエリアでヒトと共存しながら動くことを可能にする。

AMRrapyuta.ioからタスクを受け取りますが、渋滞や障害物の回避等はAMR同士の相互通信で制御します。要は人間と同じで、上からの指示に対し、現場のチームが話し合って最適な行動を決める。こうした群制御による柔軟性が我々のソリューションの強みで、『最大の不確定要素』とも言えるヒトとの協働作業を可能にします」

■独自の成果連動型プランも

現在、日本で稼働する同社のAMR100台以上。ガジャン氏は「引き合いは増えているものの、まだまだ我々のサービスに興味を持つ人を増やしたい」と話す。

しかし実績の増加はデータの蓄積につながり、導入効果の高精度な予測を可能にした。そうした背景から同社は今年6月、AMR導入後の生産性に応じてサブスク料金を変動させる成果連動型のユニークなプランを開始。導入効果が出なければ料金が下がるプランは業界でも例を見ず、挑戦的と言えるが、ガジャン氏は「我々はシミュレーションに実際にAMRを走らせるソフト(rapyuta.io)を使うため予測精度が高く、こうしたプランの提供が可能」と自信を覗かせる。

同社は調達した資金をマーケティングやR&Dに振り分け、自律走行型フォークリフト等の開発を進めるなどさらなる成長へ舵を切る。「将来は製造現場へのソリューション提供も行いたいが、当面は物流にフォーカスする」といい、22年中にAMRの導入数900台を目指す。

2022825日号掲載)