日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

連載

連載

けんかっ早いけど人が好き Vol.55

暑すぎる!

暑くて暑くて暑い。国連は地球沸騰の時代に入ったというが、私はすでに暑さへの怒りが沸騰中である。ここまで暑いと外に出てはいけない。あちこちに喧嘩をふっかけてしまう(違)。こういうときは屋内でおとなしく過ごすに限る。リモートワークが適用外の職種の方々には本当に頭が下がる。宅配で生き延びている私としては感謝しかない。

写真を撮りに車の外に出ただけで倒れるほどの暑さ。

ただ、もともと息をひそめるように過ごすのが苦手なため、すぐに飽きて外に出たくなってしまう。取材だの撮影だのと依頼があると嬉々として受けてしまうのだ。今回の依頼は埼玉県の北西部だった。いわゆる日本の最高気温を記録しようかという地域。しかも日程は8月上旬。だというのに暑いことをすっかり忘れ、ふたつ返事で受けてしまった。

当日は朝からとんでもない暑さになった。家を出る朝6時の時点で28度というしびれる数字。車内ではエアコンが効いて快適……のはずだが、その日に限って試乗したのは軽自動車。横幅が狭く、頭のすぐわきに窓があるためガラスを通りこした熱気が顔のまわりをもんわりと暑くする。エアコンを全開にしても顔まわりが暑いとぜんぜん涼しく感じられないのだ。車内熱中症になるんじゃないかと思って外気温の表示を見たら40度とあってげんなりした。ガラスメーカーにはぜひ、外気温を遮断するガラスの開発を急いでやっていただきたい。

もう、真夏の外仕事はパスだ、パス。次からは絶対に断ってやる。そう思いながら走りに走り、なんとか目的地にたどりつく。へろへろになりながらも仕事を完遂し、よくやった、でかしたと自らをほめちぎる。あとは帰るだけだ。帰路についた午後は、さらに気温が上昇している。家にたどりつけるのかと不安になったそのとき、目の前にとんでもないものが現れた。

強い日差しを浴びて緑の葉を輝かせる樹々。背景には真っ青な空。手前にはオレンジのポピー(たぶん)が気持ちよさそうにゆらめいている。思わず見惚れるほどの美しさで、熱中症で倒れる前の幻覚を見たのかと思ったほどだ。

暑くて暑くて暑い。真夏の外仕事はほんとうにごめんだ。でも、こんな景色が見られるならば、またやってもいいかなと決心はあっさりと崩れかけている。

2023825日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)