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ファザーマシン2/Chapter5

NC機より汎用旋盤に惹かれる

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。
今回は、私が通った職業訓練校での経験、後編をお話しします。

職業訓練校の卒業制作で作ったスターリングエンジン

技能検定という同じ最初の試練を乗り越えたこともあり、クラスの雰囲気は良くなっていきました。しかし、この頃になると授業の厳しさからか途中で学校を辞めてしまう方や、検定に受かり、内定も決まった方は早期卒業で、クラスの人数は少し減っていきます。

職業訓練の中で特に厳しいと感じた授業を挙げるなら、やはり機械手仕上げの授業でしょう。この授業では、外部からの熟練した職人の講師を招き、真夏に鉄工ヤスリや「きさげ」を使った手仕上げの技能を学びます。

さすがに連日ではありませんが、朝から学校へ行き、一心不乱にやすりがけをする日々が約2週間続くのです。もちろんこの仕事をされている方は、毎日この作業を行うわけですから、本当に大変で難しい仕事だと理解することができました。

ではいったい機械手仕上げ(正確には機械組立仕上げと言う)の何がそこまで難しいのでしょうか? ちょこっとかじっただけの私が説明するのもおこがましいですが、簡潔に説明させていただきますと、

ただ闇雲に鉄を削るのではなく仕上げだからです。図面通りの形状はもちろん、幾何公差なども手の感覚で達成する必要があります。鉄のブロックをバイスで挟んでヤスリで削り、バイスから外し測定してまた削るという作業をひたすら繰り返す。しかも機械という名ですが実際には「ほぼ手作業」(笑)です。

最初はヤスリで平面に削るだけでもかなり難しく、直角度や平行度、きさげを使った擦り合わせも行います。旋盤などの機械ではなく、自身の体力と道具を駆使しての精密手仕上げ加工。初めての「本物」の職人さんとの出会いでしたが、指導しながらでも誰よりも早く作業を終え、しかもその精度と仕上がりは完璧。その技量には圧倒されました。

■「コネ入社」のはずが…

夏休みを終えると、CAD/CAMNC旋盤、マシニングを使った授業もスタートしました。NC機操作のGコードの授業も始まり、G00X150Y300のようなアルファベットと数字が羅列するプログラムを学びます。

汎用機とNC機の違いは、簡単に言えば、汎用機は加工条件(回転数、切込み量、送り速度、工具、加工方向など)を人間が、都度変更しながら加工を行うのに対し、NC機では加工前に予め加工条件を1つのプログラムとして作成します。

NC機は一度プログラムさえ作ってしまえば、基本的に毎回同じモノが製作できるという量産に向いた機械です。車で例えると紙の地図を使った道案内とナビの違いと言うとわかりやすいですかね?

NC機は非常に便利でほとんどの企業はNC機を導入していると思いますが、私は良くも悪くも普通旋盤に夢中だったため、コンピュータで自動制御されるNC機には苦手意識があり、何故か「旋盤でやっていく!」という固い決意も持っていました。

それは就職活動が始まっても変わらず、会社見学でもやはりNC機を使った仕事よりも、汎用機で黙々と加工されている方が魅力的に見えていました。

ちなみにCAMの楽しさ、便利さを知った今ではどちらの仕事も魅力的に感じます!

就職活動と言えば在学中、父のコネクションで神奈川県の会社の入社試験を受けに行ったこともありましたが、結果は残念ながら不合格。コネクションとはいったい(笑)。

最終的には訓練校に来ていた求人で一番自分に合っていると思った会社の面接を受け、12月に無事内定をもらうことができました。

高卒で何もなかったとんこつ青年も、職業訓練のおかげで手に職をつけ、4月からいよいよ社会人です。しかも同じクラスで友人となったKくんとも同じ職場という熱い展開! 次回は波乱の新社会人編です。お楽しみに~

(2023年8月10日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は11.6万人(2023年7月24日現在)