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行政と連携し空き家対策一気通貫サポート

「物件情報量と強い発信力」で空き家問題解決

日本の空き家は現在849万戸、2030年には2千万戸まで増えると予測されており、深刻化が懸念されている。

現状の849万戸のうち500万戸は売りや貸しに出されている家屋だが、空き家活用(東京都港区)は残りの349万戸に着目。未流通の空き家のデータベース化と空き家問題解決を目指す。

「未流通の空き家というと、放ったらかしにされたぼろぼろの家屋を想像しませんか?

高知県東洋町の空き家はYouTubeを通じ名古屋市から購入者希望者が現れた。

実はそういう管理不全の物件は23万戸程度、全体の6%で、少しの手直しで使える空き家が多くあります。我々は家財が残ったままだとか思い入れがありどうすれば分からないといった状況の空き家のデータベースを構築し、中古不動産流通市場を活性化するプラットフォーマーを目指しています」と代表取締役和田貴充CEOは話す。

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代表取締役和田貴充CEO

自治体と組み、空き家情報をクラウドツールにより集積する「アキカツ調査クラウド」と、役所内に空き家相談窓口「アキカツカウンター」設置などで、空き家問題解決を支援する「アキカツ自治体サポート」を提供する。状況に応じて不動産業者や工務店、片付け業者の紹介も行い、空き家活用に至るまで一気通貫でサポートする体制を整えた。

「信用力のある行政と連携することで相談者は安心して相談でき、我々としても空き家調査のマンパワーを行政の手を借りられるため、サービスに注力できます。今年の111日には、世田谷区(東京都)、栗山町(北海道)に続いて大阪生野区(大阪府)で3例目のアキカツカウンターを設置。いずれも空き家対策に力を入れている自治体から声がかかって実現しました」。

アキカツ自治体サポートの特色は、自治体から予め空き家対策費として費用を支払われており安定的に活動できる点。空き家対策に関する事業は他にもあるが、間口の導入費用は無料としマッチングが成立すれば支払うといった仕組みをとる会社が多い。先に予算を組んで支払うため効果が出るように自治体側と積極的に連携できるという。

YouTubeで空き家紹介の動画を公開していますが、物件が売却できれば所有者から制作費用をいただく成果報酬のようなもので、利用者にあまり負担がない仕組みです」(和田CEO)。

■動画配信で海外からの購入も

行政と連携し活動の根を拡げる空き家活用だが、動画配信も熱心に取り組む。和田CEO自身が全国各地の空き家を紹介する動画「空き家やんちゃんねる」を1年半前に開設。チャンネル登録者数は4万人超、動画総再生回数は約600万回と注目を集める。動画を通じて県外や海外からの購入の架け橋にもなった。取り扱うのは「買える空き家」だが、空き家の購入検討者でなくても面白く楽しめる動画づくりになっている。

「エリアにこだわらず日本全国の空き家相談を撮影して発信し、さらに売買もできるプラットフォームとして機能してる点は新規性があります。私自身が過去に不動産業界で働いていた知識と経験で物件を分かりやすく伝えるよう心掛けています」と和田CEOは人気の秘訣を語る。

空き家購入に特化した「アキカツローン」も業界初となる取り組み。「担保評価がない空き家は使える住宅ローンがありませんでしたが、アキカツローンは購入費用1千万まで、リフォーム費用2千万までの合計3千万までの融資額を最大15年間借りられます」と融資の仕組みも整備した。

「空き家問題の本質は『人』の意思決定の問題。所有者と活用者、行政側の意思決定をサポートして空き家市場を活性化していきます」(和田CEO)。

(2023年7月25日掲載)