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けんかっ早いけど人が好き Vol.53

白いスリッパ

日本が誇るタオルブランド、今治の白いタオルケットを手に入れて以来、私の睡眠タイムは幸せに包まれている。軽くて温かい肌触りは言うまでもないが、特に気に入っているのは白ということだ。白い寝具。それは私がずっと憧れていたものだからだ。

1000円を切る安さだが、夢は二日で崩壊した。

日本の寝具は、なぜか花模様が多い。しかもどれもこれも独特の……な花柄だ。テレビショッピングのCMでも「二枚セットでお値段こちら!」と紹介される掛布団は、ピンクと青の花柄である。みんなそんなに花柄が好きなのか? あの花柄に包まれて眠りたいのだろうか。

私はノーだ。私が長年憧れ続けてきたのはホテルのような寝具。シーツも、掛布団も枕カバーも全部、白。少しの汚れも許さない、白。もっとも洗濯王子(という人がいる)に言わせると「白は色落ちを考えなくていいので、染みを落とすためにがんがん洗える」利点があるそうだが、そんな現実的な裏事情はどうでもよくて、私はやっぱり花嫁ドレスのような白い寝具に憧れるのである。白いタオルケットを手に入れたあと、私は毛布も白にした。無印○品のフリース毛布というやつで、これがまた軽くてふわふわで、本当にもう「好き!」という感じである。

夏になりスリッパも衣替えの季節になった。毎夏、指先のあいた、かつ、足裏が当たる部分は畳のような素材が使われた涼し気なタイプを選んでいる。先日ふと、インテリア用品を扱うニ〇リに行ってみたところ、ワッフル生地(ベルギーワッフルのような四角模様の肌触りのいい生地)で仕立てられた夏用スリッパがあるではないか。しかも白! 即買いである。

家にお迎えして履いてみる。汗を吸い取るような肌触り。なにより、白という見た目が申し分なくうっとりする、はずだったのだが、あれ?

わずか二日後。私はスリッパの異変に気が付いた。かかとの部分がうす汚れているではないか。まだ二日めだというのに、そんなに汚いのか私の足裏は! 憧れの白い世界が一気に崩壊していく。どうしよう。洗う? いや、そもそもスリッパって洗ってまで使うものなの? 少なくともこれまでの人生、洗ったことなんてないぞ。薄汚れていくスリッパを見つめ、私は日々、深い落胆のため息をついている。

2023725日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)