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ファザーマシン2/Chapter4

旋盤加工は天職だった!

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。今回は、私が通った職業訓練校でのエピソードについて詳しくお話ししたいと思います。

実際に使用していた旋盤です

集団生活を長く続けていく上で、私が一番重視するのはまさに「対人関係」です。この部分をうまくこなせるかどうかで、集団生活が楽しいものになるか、それとも退屈なものになるかが決まると思っています。いわゆる「何を食べるかよりも、誰と食べるか」のようなものですね。入学式後の最初の自己紹介では、緊張して何を話したのかすら覚えていません。

そう考えると、きっと失敗だったのでしょう(笑)。私たちのクラスは全員で20人ほど。私のような若い世代はまだクラスに馴染んでいませんでしたが、中高年層の皆さんはすでにグループを形成していました。

その日の帰り際、幸運にも下駄箱で同年代のSくんに話しかけられ、すぐに仲良くなりました。Sくんは、家業の町工場を継ぐために学校に来ていたそうですが、本人はあまり喜んでいませんでした。その事実を聞いた私は、彼が羨ましいと感じましたが、同時に人それぞれ考え方が大きく違うことにも驚きました。

機械加工技術コースには2人の先生がいて、1人はスラムダンクの安西先生風のT先生、もう1人はとてもアクティブなM先生です。2人の関係性や雰囲気が、私たちの学校生活をより豊かなものにしてくれました。彼らはこの業界のベテランであり、人間としても私が尊敬する恩師です。ここで2人から聞いた名言もご紹介します。

T先生からは、「削った切粉は戻らない」。M先生からは、「測れないと作れない」と教わりました。「削った切粉は戻らない」は、例え001㍉でも公差からマイナスすると不良になり、それは二度と戻らないという意味です。実技試験では正確な作業だけでなく、スピードも求められますが、急いで削り過ぎると不合格になるので、慎重さも必要という意味です。

「測れないと作れない」は、この業界には図面という答えがあり、それを達成するには正確に測定する技能も必要だという意味です。製作物を正確に測定し、それを適正に評価できなければ製品にはなりえません。

■センスが問われる作業

訓練校の生活にも慣れてきたある日、M先生から一人のクラスメイトを紹介されました。「この子も一人暮らしだから仲良くしてやってね!」その時は、心の中で「何その理由(笑)」と思いましたが、後にそのKくんも私たちと同い年であることを知り、仲良くなりました。彼はとても静かな性格の持ち主でしたが、今では特級機械加工技能士として活躍しています。

こうして友人らとともに、7月の普通旋盤作業3級の試験に向けての特訓が始まりました。製作と測定を繰り返す日々、何十個ほど同じものを作ったのでしょうか? さすがに飽きます。 普通旋盤では、その操作に対するセンスが問われます。運動神経に例えることができるかどうかはわかりませんが、そんな感覚です。

こう見えて私にはセンスがありました! もちろん、父が旋盤職人だったことも大きいですが、何よりも旋盤を、この業界を、好きになったことも大きいと思います。

材料をチャッキングする感覚、切削中の機械の音や振動、切りくずの状態など、どれも興味深いものでした。それらの体験を通して、自分が旋盤作業をすることが本当に好きだと感じ、いつの間にか「これが私の天職かもしれない」と思い始めました。放課後には、一人暮らしで時間に余裕があったKくんやM先生と旋盤作業をする日もありました。

そんなこんなで試験は無事に合格し、車の免許以外の初めての国家資格を取得しました。

一人暮らしにも慣れ、学校生活は後期へと進みます。

2023725日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は11.6万人(2023年7月24日現在)