日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

連載

連載

UR都市機構、中宮第3団地をリノベーション

大阪府内にある同タイプ住戸600戸へ横展開も

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が建設した昭和30年代の団地は建て替えが進むが、昭和40年代建設の団地は30万5350戸あり、ストック全体の約43.2%(令和3年時点)を占める。少子高齢化の中、すべて建て替えるのは現実的ではなく、リノベーションでの活性化を模索している。

中宮第3団地

昭和44年~45年に建てられた中宮第3団地(大阪府枚方市)の一室をリノベーションしモデルルームとした。

「居間心−imagine」と銘打ち「住戸の核であり生活の中心である『居間』に焦点をあて、シンプルかつ自由度の高い贅沢な空間とすることで、住み手のimage次第でさまざまな活用を可能とする『イマの間』を提供」(UR都市機構)するという。

類似した3Kの間取りがUR都市機構が管理する住戸には多い。今回のリノベーションの目的の一つは、横展開可能な汎用性を持った部屋を作ることだ。

団地の部屋のリノベーションで多く行われる洋室化よりコストを抑え、団地の歴史を残しつつ改装は最小限にとどめた。またふすまを取り払うなどの改装は、退去後の原状回復費用の低減にもつながる。

この型式は建設当時、ファミリー世帯の入居を想定していたが、現在の感覚ではファミリー層には手狭だ。洗濯機の設置を想定したスペースや設備がなく、後付けの設備で対応している状態だ。

■ふすま撤去で環境負荷低減

そこで3つのポイントを中心に改装を実施し3Kから1LDKに間取りを変更した。ターゲットも1人暮らし、または2人暮らしを想定。リモートワークなどの新しい働き方を取り入れ、最寄り駅からのアクセスに大きく左右されない層に訴求していく。

まず、ふすまをすべて撤去してLDK化を行った。間仕切りのふすまをすべて無くしたことで、自由空間として贅沢な広さを確保した。押入れのふすまも撤去し作業スペースにした。ふすまがなくなることで、退去時に発生するふすまの廃棄もなくなり環境負荷を減らせた。

ランドリーとクローゼットを一ケ所へ集約し、居間空間(和室2間)を広々と使うことができるようになった。

他に、飾り棚や収納ボードを造作可能な付け柱を新設し、住まい手の自由な発想を活かせるようにした。付け柱については原状回復不要とした。DIYを取り入れた新しい住まい方を提案することで、他の賃貸物件との差別化を図っている。

今リノベーションにより入居率アップに加え、改良前住戸の家賃から5%増を確保し収益性の改善にもつなげる。

「まずモデルルームとして改装。同コンセプトの部屋で入居者を募集する。実際の生活で生じる課題などのフィードバックも受けながら、さらに改善していく場合もあるだろう。今後、昭和40年代管理開始団地の3Kを中心に、同タイプのリノベーションを実施していきたい」(UR都市機構大阪エリア経営部企画課水取郁彰さん)とする。

今年度は、大阪府下複数団地で総計20戸程度供給予定だ。需要を見ながら、供給団地や間取りを拡大していく。なお大阪府下には昭和40年代管理開始の団地が43246戸あり、このリノベーションが可能な型式の部屋は約600戸ある。今回のリノベーションを手始めに、ほかの型式に横展開できる部屋の開発も視野に入る。

Rの時代02.jpg

(【左】リノベーション前、【右】リノベーション後)

2023710日号掲載)