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扉の先75/自らの手で動かす搭乗型ロボット

ツバメインダストリ、リアル「モビルスーツ」大地に立つ

人間がヒト型の大型ロボットに搭乗し、意のままに操る。ガンダムやエヴァンゲリオンなどロボットアニメの世界にようやく現実が追いつきはじめた。

「SFの世界を現実に」を掲げ創業したツバメインダストリは今年6月、搭乗型ロボット「アーカックス」初号機を発表した。全高4・5㍍、重量3㌧の巨体を支えるフレームは、建設機械の設計製作で数々の実績を持つ老舗鉄工所が制作。鉄パイプと鉄板の溶接で製作されたフレームは、強度を保つだけではなく、量産性を意識した作りやすさや組立性も考慮されている。

アーカックス(ロボットモード)。中央黄色部分がコクピット

外装はFRPを採用。数多くのロボット系オブジェを制作した腕利きの職人が手掛けた。パテ補修とヤスリがけで綺麗な面やエッジに仕上げられた表面には、メタリックな質感を出しやすい車用の塗料が使われている。

「ハッチを開いてコックピットに乗り込み、ロボットと一体となって操作する」というアニメさながらの搭乗アクションにもこだわった。脚部を折りたたんで変形する可変式の機体は、全高を下げることでコクピットへの搭乗を可能にした。腕を畳み移動に特化する形態の「ビークルモード」と、腕を使った作業が行える「ロボットモード」の2つのモードに変形する。初めての独り暮らしと機械加工

機体に取り付けられた4本の脚部には車輪が取り付けられており、前輪部分はステアリング機能、後輪部分をモーターで動かす。移動速度はロボットモードが時速2㌔、ビークルモードが時速10㌔となっている。

機体中央部のコックピットは閉鎖空間とし、周囲の情報は機体の6カ所に取り付けられたカメラが映し出した映像をモニターで確認する。移動や動作はパイロットシートに取り付けられた左右のジョイスティックと足元のフットペダルで操作する。いずれも可動部の多いロボットを直感的に操作できるよう、適切な位置にデバイスとモニターを配置している。

■「横浜ガンダム」のキーマンも

このロマンあふれる機体を手掛けた開発陣には、その道のスペシャリストが揃っている。同社の吉田龍央代表は、学生時代に画期的な筋電義手の開発などを手掛け、若くして注目を集めたエンジニア。取締役に名を連ねる石井啓範氏は、大手重機メーカーを経て横浜・ガンダムファクトリーの「動くガンダム」を世に送り出した開発者。同じく取締役の原田憲一氏は自動車関連分野のベンチャーなどで辣腕を奮った経営のスペシャリスト。

いずれのメンバーも「子供のころから多くの人が憧れた体験を実現したい」という思いでプロダクト開発に携わっている。

「アーカックスは搭乗型ロボットという、これまで無かった新しい市場を形成することを目指しています。当面は超高級車や自家用ジェット機のようなマーケットを販売指標と考えており、国内だけでなく海外向けの受注販売も視野に入れています」(吉田代表)

アーカックスは10月に開催される「JAPAN MOBILITY SHOW2023」(旧東京モーターショー)に「次世代モビリティ」として展示されるが、出展に際して協賛企業を募っている。

「協賛いただいた企業様には機体へのスポンサーロゴ掲載、各種ポスターへの社名掲載、アーカックスを使用したイベント・展示・搭乗会等の開催などを提供します。『搭乗して自らの意のままに動かせるロボット』に共感いただける皆様に、ぜひ参加して頂けると幸いです」(吉田代表)

2023710日号掲載)