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扉の先64/惣菜盛付けロボット 続々導入

経産省が旗振り、24年度までに中小へも

惣菜盛付けの自動化が進みそうだ。食品業界のなかでもとりわけロボット導入が難しく労働生産性が低いとされてきたのがこの分野。惣菜は形が一定でなく、力を加えると変形し、種類も多いからだ。だが、経済産業省がベンダー企業とユーザー企業を結びつけ、ロボットフレンドリー(ロボフレ)な環境を構築することで現場導入を実現した。

惣菜企業3社に導入された人型協働ロボット「Foodly」(写真は3月29日、経産省と日本惣菜協会が開いた会見後のデモンストレーションから)

惣菜企業3社(ヒライ、藤本食品、イチビキ)の工場に導入された人型協働ロボット「Foodly」はバラ積みされたから揚げなどの食品を左右のアームを使って1つずつ掴んで容器に移す。顔と胸の部分に付けたカメラで対象物を認識することで、大きさ・形の異なる対象物をしっかりキャッチする。

台車に載ったFoodlyは幅約150㌢、重量30㌔グラムと小型。開発したアールティ(東京都千代田区)の中川友紀子社長は「小さくて軽いので片手でも移動できる。作業者に交じって盛付け作業ができ、既存設備が生かせる」と利点を話す。ピッキングした食品をベルトコンベアに流す工程での利用を想定する。販売価格は基本仕様で800万円。柔軟にカスタマイズできる。「時給1千円として16時間稼働させれば年間で約400万円の仕事をしてくれることになる。価格を600万円ほどに下げられればかなり広がるだろう」と自信を覗かせる。

数年で投資回収

一方、マックスバリュ東海の長泉工場に325日に導入されたのは産業用ロボット(エプソン製スカラロボット)を用いた盛付けロボットシステム。このシステムの開発はTeam Cross FAのメンバー企業であるFAプロダクツ、オフィスエフエイ・コム、日本サポートシステム、さらに食品用ロボットで実績をもつコネクテッドロボティクスなどが担った。盛付けロボットはポテトサラダなど粘性の高い食品をビニールカバーを付けたハンドですくい取って計量し(130㌘をすくい取る場合で誤差は10%ほど)、ベルトコンベアに流す。1時間の動作回数は250回と人より劣るが、昼夜を問わず休みなく作業し続けられるメリットがある。

Team Cross FAの天野眞也プロデュース統括は「マックスバリュ東海さんのケースで7人のシフト体制を3人に減らすことができた。このシステムは注文いただければすぐに対応する。初期費用は導入量によるが、数年で投資回収できるだろう」と話す。マックスバリュ東海の遠藤真由美デリカ商品統括部長は「ロボットを使っての7人→3人体制への変更はスタンダードであり、将来的にはさらに生産性を上げていける。ポテサラだけでなく様々な形状・粘性の惣菜を盛り付けられるようにしていきたい」と意気込む。

人手不足や生産性向上に対応するため経産省は2019年秋に「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」を設置。ロボフレな環境を実現させようと取り組んでいる。上記は食品分野での成果の一部。今後、廉価なアームロボットとトップシール機の研究開発に着手し、24年度までに中小の惣菜企業での実装を目指す。

2022425日号掲載)