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扉の先79/国際ロボット展から【中編】

高速処理するマテハンロボット

東京で12月2日までの4日間開かれた第25回国際ロボット展は14万8千人が来場する賑わいを見せた。ネット通販の拡大に対応したマテハンとしてのロボットや、ロボットと組み合わせてライン構築できるコンベヤに注目した。

川崎重工業はデバンニングロボット「Vambo」を機能強化した。

川崎重工業は前回展で披露したデバンニングロボット「Vambo」を機能強化して実演した。作業対象の段ボール箱を認識するカメラを従来より1台多い2台付け、処理能力を毎時400~800箱と3割アップ。同社は「カメラを増やしたことでケースを取り出して荷下ろししている間に別のカメラで次の対象物の位置を把握する。コンテナ内の1000~1600ケースを2時間で処理したいお客様のニーズに応えられる」と言う。納入実績としては10件近くになり、「扱うケースや積み方に傾向があることを把握でき、仕様を標準化しつつある」と他社を引き離す考え。

スター精機は低全高マルチパレタイザー「PXLシリーズ」を初出展。標準で1700㍉、オプションだと2000㍉の高さまで段ボールを積むことができる。塩谷陽一社長は「物流のパレタイジングロボットに力を入れている。(機械高さを約2400㍉に抑え)天井が低いところでも導入できるメリットを生かし新たな需要を掘り起こしたい。お客様の立場に立って開発をしようというスタンスでいる」と話す。

カートラック(荷物運搬台車)とロボットパレタイザーAi6Fを使って実演したのはオークラ輸送機。「当社は今回の積み付けロボットや自動搬送だけでなく、そこに至るコンベヤから6軸ロボットまで含め自社でトータルで提案できる強みがある」とする。「今は物流の自動化は大手企業がメインだが中小企業にも広がってくるだろう。全部の自動化は難しくとも、大変な荷下ろしや積み付けだけでも自動化してみようとなる。そのイメージをしてもらうのも今回の目的」と狙いを話す。

■リニア搬送に 相次ぐ新規参入

ロボットと連携するかたちでコンベヤが高度化し、新規参入が相次ぐ。三菱電機はEV化の流れを受けリチウムイオンバッテリーの組立ラインを模して実演。従来より80%高精度化、30%高速化した6軸ロボット(来年発売予定)など6台と組み合わせてこのラインに組み込んだのは参考出品のリニアトラックシステム(24年度中の発売予定)。「他社の搬送は直線の組合せが多いが、当社は曲線にも対応し高速搬送につながる。樹脂製でなく金属ローラーを採用したことでメンテナンスの間隔を長くした」のがウリだ。

1面【扉の先】国際ロボット展から〈中編〉P2三菱電機.jpg

6台のロボットと連携する三菱電機のリニアトラックシステム

THKは小型ユニットで構成するリニア搬送システム(来年発売予定)を紹介。「小さなワークに対応できるようブロック長を短くした。ただし小型でありながら高推力・高剛性をもたせ、上からの荷重3000Nに耐える」と直動案内のパイオニアとしての自負を感じさせる。

この分野で先行するヤマハ発動機は建屋間の搬送を含めた「μtokm」を前回展から引き続きテーマに据えた。EV向けのバッテリー搬送で需要が伸びているリニアコンベアモジュール「LCMR200」や屋外搬送に強みを持つeve autonomyAMRなどをシームレスにつないだ搬送デモを実施。±5ミクロンの高精度搬送が可能なLCMR200は毎秒2500㍉の高速搬送性能をもつ。柔軟性をもたせて高精度・高速制御できるため、「設備のコンパクト化や多品種生産に対応しやすい」といったメリットがある。

伊東電機はモーター内蔵ローラー(MDR=Motor Driven Roller)を紹介。「駆動ローラーのコロの力を使って運びながら仕分けしたり、荷物をばらしたり、上げ下げできる。カートやアーム式ロボットは取って運んで戻す往復動作があり、空で動く無駄な部分があるが、MDRは連続してモノを運びながらさまざまな仕事ができる」と話す。

20231225日号掲載)