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ネクアス、卵の殻生まれのバイオプラスチック

消費量世界2位の卵に着目 

植物などの再生可能な有機資源を原料とするバイオマスプラスチック。政府は2030年までにバイオマスプラスチックの約200万トン導入を目標に掲げているが、バイオマスプラスチックを含むバイオプラスチックの国内出荷量は、2021年で8.8万㌧と現時点では道のりは遠い。

卵殻51%配合のフィルムプランター。イラストを描いてオリジナルプランターにできる

しかし「大阪万博付近を皮切りに大きな伸長を遂げる」としてネクアス(福井県坂井市・船谷和宏社長)は分解性やバイオマスプラスチック樹脂の製造・販売、その素材を利用した商品開発に力を入れる。独自の製造技術によるユニークな素材を使ったバイオプラスチック樹脂に注目が集まる。

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船谷和宏社長

代表製品のバイオマスプラスチック樹脂「NEQAS BIO」の原料は、卵の殻。石油由来ポリマーにバイオマス素材を高充填させている。フィルムやシート、発泡、ブローなどが幅広い成形に対応できる。ショッピング袋や包装資材、ボトル、マネキンや、3Dプリンター家具など用途は幅広く、採用も広く進んでいる。  

「卵殻を砕いたざらざらとした風合いは意匠性が高く、緩衝材もそのままラッピングとして使えると好評です」と船谷社長は特長を語る。プラスチック資材メーカーの川上産業と共同開発した緩衝材「たまぷち」は22年に日本パッケージングコンテストで日用品・雑貨包装部門賞を受賞した。

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卵の殻を高配合したバイオマスプラスチック「NEQAS BIO

また、卵殻を51%配合したフィルムプランター「tamakara」は同社の人気商品。2年前に発売し、10万枚を売り上げるなど好調だ。袋状に成形したtamakaraは、重量が21㌘と軽く、紙袋のように折りたため、収納に場所を取らない。クレヨンなどでイラストも描け、オリジナルプランターとしてプレゼントやイベントで使用したりと、コミュニケーションツールになる点も魅力だ。1150円程度で水や雪に強く、屋外でも安心して使える。小学校でも授業で活用したいという声が出ているという。人気の高さから、今春からホームセンターにも並ぶ予定だ。

■卵の殻で消臭・抗菌効果も

卵の消費量が世界第2位の日本では、年間約27万㌧もの卵の殻が廃棄されている。「そのなかで回収可能とされるのが13万㌧。原料調達も可能で、卵の殻は炭酸カルシウム95%以上と使いやすいと素材に選びました。実際製品にしてみると、非可食部である卵の殻をアップサイクルした点に魅力を感じてくださり、受注の決め手となった企業案件もありました」と手応えを語る。

主力製品であるNEQAS BIO 70%卵殻配合マスターバッチは、汗や加齢、排せつ臭などの臭気成分に対する消臭効果や、黄色ブドウ球菌や大腸菌への抗菌性も高いといった特性がある。いずれも51%の卵殻配合で効果を発揮する。

それぞれの顧客ニーズに合わせてバイオマス度を調整可能。他にも卵殻25%配合のポリ袋も販売する。日本有機資源協会(JORA)のバイオマスマークも取得済みだ。

独自の製造技術を活かし、海洋生分解性を有する樹脂「NEQAS OCEAN」も開発、販売している。こちらは木材やコットンなどの酢酸セルロースが主原料。アクリルに似た高透明性をもつ素材で、抗菌性、リサイクル性などの特長を有する。すでに、釣り具関係やゴルフティーなどに採用されており、今後は生分解性でありながら高透明性のブリスターパックや包装資材として注目されている。

今後も製品開発力を強みとしてバイオマスプラスチックの導入促進と、資源の再利用や海洋プラスチック問題の解決を新素材から支えていく。

(2024年1月25日号掲載)