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けんかっ早いけど人が好き Vol.39

大掃除の宝のゆくえ

年末といえば大掃除だが、こんな寒い時期に窓を全開にしなくてもという思いから、我が家はゴールデンウィークに行っている。しかし、実家は違う。きれいな家で新年を迎えたいらしく、先日、母から連絡がきた。

お嫁入したグラスも大活躍な週末。撮影:友人。

「あんたのものが山ほどあるから何とかしてほしい」

30歳過ぎまで実家で過ごした私は一人暮らしを始めるときに使うものだけを持ち出し、その他全部は実家に残したままだったのだ。あれからン十年。ついに両親も終活よろしく不用品の処分をはじめ、放置したままの私の部屋にもメスが入ったというわけだ。

実家にもどると、まず車庫を見ろという。シャッター付きの車庫は雨風にさらされないのをいいことに物置化しており、朽ち果てたクルマのチェーンや、バッテリー補充液やワックスや、洗車用バケツやバケツやバケツが山のように置いてある。猛省しつつすべてクルマに積みこんで持ち帰ることにした=その後、分別して破棄。次に私が使っていた部屋である。押し入れを開けると箱がぎっしりと入っている。まったく記憶にないそれらを開けてみると、世界的に有名な高級グラスの〇〇がぞろぞろ出てくるではないか。私が20代のころ世の中はバブル真っ盛り。イベントやパーティに行けばこうした高級品をばんばんもらっていたのである。

〇〇は買えば数万円はする。しかし、酒をほとんど飲まない私には無用の長物でもある。だったらフリマアプリで売るか。でも、梱包や配送作業が面倒だ。やはり、燃えないゴミの日にこっそり捨ててしまおうか……。そのとき、一人の男性の顔が天から降ってきた。そうだ、彼なら!

取材で知り合ってから親しくしている男性は、モノを大切にする丁寧な生活を好み、靴はいつもきれいに磨かれている。週末は手ごろなワインを選び、おうちバルを楽しむと言っていた。久しぶりに連絡をとると喜んでもらってくれるという。物はやはり、価値のわかる人に使ってもらうのが一番だ。

いいお嫁入ができた満足感と、物を手放せたすっきり感。そして、思う。友人という存在はいつも私を助けてくれる。物や知人は断捨離しても、友人は長く細くつながっていたいとしみじみ思っている。

20221225日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員