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扉の先69/ロボットにも環境に合った作業着を

ナベル、カバーで広がる協働ロボの活躍の場

協働ロボットの表面を覆うスリムなシルエットのカバー。ピタリとした作りのため動きを阻害するのではと勘繰ってしまうが、ロボットはカバーなどないかのようにスムーズに動く。「弊社のカバーはフィット感と動きやすさが違います」と、カバーを提供するナベル・経営企画室の永井宏知氏。様々な技術が披露されたJIMTOFでも、ナベルが披露した冒頭のデモはとりわけ印象深かった。

ロボットカバーメーカーとして存在感を高める同社だが、そのルーツはまったくの別分野にある。1972年の創業時、同社はカメラ用蛇腹の専業メーカーだった。後発だった同社が差別化のために磨いたのが、素材の開発力と素材に合った製法を編み出す力。蛇腹構造のカメラはその後次第に姿を消すが、ここで培った2つの力が原動力となり、同社は事業領域を柔軟に変えながら成長を続けていく。

「カメラ用蛇腹の需要が減るなか、我々は今一度製品を見つめなおし『蛇腹=機能的なカバー』と再定義しました。そしてMRIの昇降台など事業領域を広げるなか、ヒット商品となったのがCO2レーザ加工機の光路用蛇腹です」(永井宏知氏)

レーザを遮光する光路用蛇腹は高い耐熱性が必要。そこで同社は独自素材の燃えにくい蛇腹を開発し、これが評価を得て国内のレーザ加工機メーカーの90%超が採用するまでになった。そして同社が次なる成長の舞台に選んだのがロボットカバー。とりわけ協働ロボットに狙いを定め、「Robot-Flex」として18年に上市した。

■標準品と特注の両軸で攻勢

Robot-Flexの特長は用途に応じた標準品を広く取り揃えることだ。防塵・防水の一般環境用/衝撃に強いブラスト用/塗装用/耐クーラントの工作機械用/耐熱・耐スパッタの溶接用/発塵しづらいクリーン環境用と6種のカバーをラインアップ。いずれもテックマンロボットやファナック、安川電機など主要6社の協働ロボットに対応する。さらにJIMTOFでは低コスト仕様の耐油・耐クーラントタイプを発表し、ロボットカバーの標準品は全7タイプに拡大。こうした標準品の即納体制を整える一方で、特注カバーも製作するという。

「我々の強みは生地開発から自社で手がける点。各メーカーの可動範囲に合わせ動きを阻害しない設計を行うので、どのようなユーザー・環境でも自動化のお手伝いができます。カメラやハンド、力覚センサなど周辺機器のカバーも製作可能で、足元でも力覚センサカバーのニーズが増えています。ロボットは防水でも、センサは水に弱いことが多いですから」(経営企画室・永井良知氏)

協働ロボットは成長が期待される分野。この分野では後発だが、「展示会に出すたびに認知度や需要の伸びを感じる製品」(永井良知氏)と手ごたえを感じている。標準品の中でも工作機械用や、耐熱・耐スパッタ性が高くTIG溶接時に発生する高周波ノイズを低減できる溶接用のカバーが特に好調という。

永井宏知氏は「人と同じ環境で動く協働ロボットには、人と同じように環境に適した作業着が必要です」と話す。協働ロボットの裾野を広げるうえで、この考え方はキーポイントになりそうだ。

(2022年12月10日号掲載)