日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として創刊来、
半世紀を超す実績を持つ日本物流新聞のWEBサイトです。
サイト独自の情報を増やしています。

検索

連載

けんかっ早いけど人が好き vol.4

分身ロボット・オリヒメ

七月といえば七夕、織姫と彦星である。大人になると笹の葉に願いごとを書いた短冊をつるすこともなくなったけれど、ここにきて願いをたくしたい新たな織姫が登場した。正しくは、OriHime(以下オリヒメ)である。

東京日本橋にオープンした分身ロボットカフェで働くオリヒメ。手の動きがすごくかわいい。

オリヒメは分身ロボットだ。今やAIがもてはやされるなか、人間が遠隔操作で動かす。開発した吉藤オリィさんは(本名は健太朗さん。折紙が上手でみんなオリィさんと呼ぶ)、小学生のとき病気入院をきっかけに二年半のひきこもり生活を経験。家から出られず誰にも会えず、そのときに感じた絶望に近い孤独と、もともと世の中の役にたつものを作りたいという気持ちが重なって、大学生のときに孤独を解消するための分身ロボットを考案した。病気などで外に出られない人はだれかと交流することがむずかしい。けれど、自分が動けないのなら分身ロボットが代わりに行けばいいと思いついたのである。

操作は手元にあるパソコンで行う。すでに目しか動かせなくなったALSの患者でも、視線の動きだけで操作をし、文字入力~発声して会話も可能だ。テレビ電話で十分だと言われるがそれはちょっと違う。テレビ電話は用件を伝えるときは便利だが、いっしょにテレビを見たり旅行やバーベキューに行くといった「会話をしなくてもいっしょに過ごす」ことはやりにくいのである。今では、このオリヒメを使って仕事をする人も出てきた。体が動かなくても人と交流し、誰かの役に立つことができる。それは、生きる活力になる。今年の6月には東京日本橋に分身ロボットカフェがオープンし、たくさんのオリヒメが活躍している。

私の最新刊はそのオリヒメである。「世界でいちばん優しいロボット」を書くにあたり、吉藤さんにはオンラインでインタビューをさせてもらった。ただ、私の本来の取材スタイルは背後霊のようにいっしょにいて周囲の雰囲気を感じ取り、文字に変えていく。だから今回は臨場感を出すのに本当に苦労した。そして今、この原稿を書きながら思いついた。

オリヒメで取材すればよかったのではないか? オリヒメなら完全密着取材が可能だったのに、なぜ気づかなかったのだろう! 今後もコロナで行動が制限されるのなら、次の書籍の取材はオリヒメでやってみようかしら。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員