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けんかっ早いけど人が好き Vol.40

鉄のフライパン

カルシウムを摂りましょう。女性はずっと言われてきた。ダイエットしすぎへの注意喚起として。母体への配慮として。そして高齢者は健康に生きるためである。ところが数年前からは今度は筋力が大事なので、タンパク質をとれと言われはじめた。そして、今の注目ワードは鉄分である。

友人お勧めの鉄パン。私は直径24センチの深鍋を選択。

最近は手軽にサプリメントが買えるが、私はなかなか手が出ない。20年以上前にアスリートの友人が「体がサプリに慣れてしまうと食べ物などからとりこまなくなってしまう」と言っていたからだ。それが本当か思い込みかわからないのだが(今のサプリは大丈夫と聞いている)、いずれにせよ毎日飲むという規則正しいことができないずぼらな性格ゆえに、サプリは私と相性が悪いままになっている。

まあ、なんやかやいって食事といっしょに鉄分を摂るのが一番手っ取り早いはずだ。そして、鉄分といえば中学時代に家庭科の授業で習ったヒジキ、のはずなのだが、文部科学省が公表した日本食品標準成分表によると、以前の数値は鉄のフライパン(以下鉄パン)で調理したため鉄分が豊富になっただけで本当はたいしたことがないらしい。

ということは、裏を返せば、鉄パンを使えばいいのではないか? 聞くところによると鹿は鉄分が足りなくなると列車の線路を舐めにくるというし。ただ、鉄パンは重い。焦げ付く。手入れが面倒くさい。ゆえに軽くて便利なステンレスのものを使っているのだが、同世代の友人が「弱点をクリアした鉄パンを見つけた」と耳打ちしてきた。ほう。しかし、弱点クリアはいいが、鉄パンは肉を焼くときも油をひかなくてはならないではないか。こそっとカロリーの摂り過ぎはとごねたら、「なに言ってんのよ。私たち世代は油分とらないとシワが増えるだけよ!」と一蹴された。なるほど。

かくして彼女お勧めの鉄パンを入手してみた。すると肉は香ばしく野菜炒めはシャキシャキに仕上がる。料理嫌いな私でも恐ろしく食材の味が引き立ち、美味しく仕上がるではないか。しかも鉄分も摂れるなんて最高である。

なぜもっと早く鉄パンにしなかったのか悔やまれる。正しく有益な情報を得て、自分の概念をアップデートしていく大切さを、またひとつ学んだのである。

(2023年1月10日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員