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けんかっ早いけど人が好き Vol.42

まだ成長中

日本国民の平均身長の伸びが止まっているという。17歳男子の身長は、統計を取り始めた1907年には158・8㌢。その後、栄養状態の改善もあり伸び続け、170㌢を超えたのは1982年のこと。しかしそこから40年、ぱたりと伸びが止まり171㌢の壁を超えることなく今に至っているらしい。専門家は「高齢出産が進み、2500㌘以下の低体重児が増えたせいではないか」というが、私は賛同できない。というのも現在170㌢という同世代の女性の平均よりかなり高い私は、出生時2600㌘だったからだ。小さく生まれても成長する人はするのである。

そろそろ縮んでもいい年齢なのだけれど。

身長の伸びには様々な要因がからみあっているが、気合と根性も大きくかかわっていると思う。姉がいる私は洋服はいつもおさがりで、かわいいワンピースもいつ着られるかわくわくしていると、姉が習字の授業でべったりと墨をつけてしまう。ふざけんなよ、姉! そう憤慨する私に母は、「お姉ちゃんより背が高くなったら、先に着られるわよ」といって私をあおり、ついに小学6年生にして姉を超えたのである。しかし、すぐに中学生となり制服が始まったので、私の成し遂げた成果は、あまり達成感がない。

先日、20年以上ぶりに自治体で行っている健康診査に行ってきた。ずっと悪いところは微塵もなくて時間の無駄だと無視していたのだが、このところ周囲の友人が次々と体調をくずすのを見て心を入れ替えたというわけだ。

最初に身長と体重を計るのだが、我々世代で気になるのは骨粗しょう症である。さすがの私もそろそろ背も縮んできたのではと恐るおそる計測器に乗ってみる。すると、看護師さんが言った。「171㌢ですね」。はい? 

えっと、高校卒業時は169㌢だったはずだ。その後、30歳を過ぎたときに取材先で計ってみたら170㌢になっていて、わあ、まだ伸びるんだとびっくりしたのだが、さらに1㌢プラスですか? きっとこれは、計測器の個体差であろう。そう思いながらも、いったい私の身長はどこまで伸びるのかとちょっと不安にすらなる。伸びて欲しいのは背じゃなくて、文章を書く能力やインタビュー技術なのだが、そちらは停滞中。世の中はうまくいかないものである。

(2023年2月10日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員