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ジダイノベーター Vol.10/再エネ蓄電池の爆発的普及実現へ

パワーエックス、大量調達とオートメーション化でコスト抑制

2021年3月の設立から約2年で、調達資金額の累計が100億円を突破したパワーエックス。伊藤正裕取締役兼代表執行役社長CEOは「我々が目指すのは自然エネルギーの爆発的普及。資金は、主に工場の設備投資や研究開発、そしてベストな人材を集めることに充てる」と話す。岡山県玉野市において、24年に本格稼働予定の蓄電池組立工場「Power Base」を建設中。最大生産量が「国内最大級」(同社)の5GWhで、爆発的普及の体制を用意する。

EV充電器のHypercharger

「太陽光エネルギーといっても、日中しか使えず余った電気を抑制している状況。電気を蓄電池へ溜められれば夜間の発電に使え、再生エネルギーによるCO2削減が実現する」と伊藤CEOは力を込める。

同社は事業のひとつである蓄電池搭載EV充電ステーション「PowerX Charge Station」を、今夏までに東京エリアに10拠点、30年までに全国各地7000拠点へ展開する予定。今年1月にはアウディジャパンと事業提携し、超急速 EV充電器「Hypercharger」のアウディe-tron店への導入を発表するなど、業界との結びつきを着実に強めている。

日本のEV充電は「普通充電」と「急速充電」に大別されるが、普通充電は3~6㌔ワット、急速充電は数10㌔ワットの出力でEVに給電する。それに比べ、パワーエックスのEV充電は150㌔ワット、将来的に開発を見込む超急速充電は240㌔ワットと、高速・大出力の急速充電器の拡大を実現化する。

これらの事業に加え、同社は「電気を運搬する船」というこれまでにない取組みも生み出そうとしている。「私は技術が好きで、新しい発明など思いつきが多い。技術や発明を活かして社会的なインパクトを与えたい。自分の人生より長く続く役立つことをやりたい」と伊藤CEOは語る。

■価格を抑え爆発的普及狙う

「爆発的な急速普及」という大規模な動きをとるのには理由がある。「あくまで電池はツールなので、値段が下がらないと買われない。『すぐ使える電池が大量に手に入り、安い』、これはスケールを大きくするから可能になる。小さく始めると、コストがかかり競争力が失われる。蓄電池はセルの集まりのため、セルの調達価格が価格に大きな影響を与える。大量に仕入れることでコストを下げられる」。また、政府は市場がストレージパリティ(太陽光発電設備と蓄電池を導入した方が経済的となる状態)を達成できるのが30年とみて補助金政策を出している。「我々はスケールとビジネスモデルによって、ストレージパリティを今切れると確信し、事業を起こした」と勝算を見込む。

低価格を実現するもう一つの要素は、工場のオートメーション化だ。「AGVや自動倉庫、六軸ロボットを導入し、モジュール電池まではフルオートメーションで行う」と話し、EV充電ステーションも「高圧化が進めば、安全性を考えロボットアームによる給電も選択肢に出てくる。特に大型トラックやバス、重機などではあり得る」と可能性を述べる。

「新たな製造業として、製品を製造、出荷しオンタイムでデリバリーするということは簡単には見ていないが、粛々と進めていく」と意気込みを語った。

(2023年2月10日号掲載)