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けんかっ早いけど人が好き Vol.63

走りまくりの一年

年の瀬である。師も走る12月は、サンタクロースも走り回っている(走っているのはトナカイだが)。今ではかのNASAがサンタを追跡し、今、どこを飛び回っているか、次はどちらに向かっているかをつぶさに紹介している。夢がある一方で、これじゃ、サンタもトナカイもさぼれない。大変だ。トイレにも行けないなんてどれだけブラックな仕事なのだ。そうか、伝説上の人物だからトイレには行かなくてもいいのか。

実際のところ、サンタクロースの役割は親御さんが担っていることが多いけれど、実務担当は宅配便の方々だ。12月はネコや飛脚のマークが、トナカイやサンタに見えてしまうほどである。この時期、夜の20時を超えてなお荷物を届けている姿を見るたびに、感謝とご自愛を祈る気持ちでいっぱいになるヘビーユーザーの私である。

この時期になると、救急車も走り回る。夏は災害級に暑くて熱中症患者が続発して救急車が足りないと報道されていたけれど、一年で一番、救急車が忙しいのは冬だ。それも雪の日。みんな足をすべらせてコケたり、寒くて体が上手く動かず大掃除で高いところから落ちたりするのである。ただ、それなら不可抗力なので責める気も起きないが、憤怒の思いで爆発しそうになるのは、忘年会で泥酔した人(正しくはいっしょにいる人)だ。自ら調子にのって飲みまくり具合が悪くなるなんて、そういう人にこそ実費を請求してもいいんじゃないかと本気で思っている。私の知人の救急隊員は、朝8時半の勤務開始から出動要請が入り続け、夜中の2時まで飲まず食わずでの活動だった年があると笑顔で(!)教えてくれたことがある。本当に消防の方々の献身ぶりには頭が下がる。サンタと違いこちらは生身の人間なので、せめてトイレと食事の時間くらい確保してほしいものだ。

師も走る。サンタもトナカイも走る。宅配トラックも救急車も走る師走。私もよく走ったけれど、一番、速く走り過ぎたのは時間のような気がする。この一年は、まさにぶっ飛んだ一年だった。あれ、もう年の瀬ですか?

今年も一年、ありがとうございました。みなさま、どうか、安全運転で。よい新年をお迎えください。

20231225日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)