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ファザーマシン2/Chapter14

上手く仕事が出来たにもかかわらず…

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。
今回は『必要な工具と上司の機嫌』をお送りします!

手研ぎした溝入れバイト

機械加工において切削工具は無くてはならないモノです。どんな工場でも「こんなに使わんやろ!」と、ツッコミたくなるほど切削工具であふれています。

もちろん工具が摩耗、破損したときの在庫が大半を占めていると思いますが、中には何十年も前に、たった1度使用しただけの工具もあったりします。『この形状を加工するためだけ』に特別に製作された工具。それらは特殊工具と呼ばれ、大量生産された工具とは異なり高価で納期がかかることが多く、破棄したいが、10年ぶりにその工具を使う仕事が来るかもしれない。そう考えると、捨てたくても捨てられないまさに特級呪物です(笑)。

そんな切削工具ですが、当然安くはありません。5000円の加工をするのに10000円の工具を使う。なんてことはざらで、工具長補正を測定し忘れて工具をポキっと折ってしまったら、その瞬間にその仕事は赤字。

なので、基本的に経営者や上層部は工具をあまり買ってくれません。渋ります。「今ある工具じゃできないの?」なんて言われた経験ありますよね? 私は脱サラして自分のお金で工具を買うようになったので、今は渋りたくなる気持ちがとてもよくわかります!

また少し長い前置きになってしまいましたが、ドリルの手研ぎができる人がいるという噂が社内で広まり、NC旋盤の担当であるEさんが私のところに訪れました。

そうです、Chapter 12で話した、私が勝手に加工を進めて叱られたあのEさんです。彼が「これ作れる?」と言って、1枚の図面を私に渡しました。

■大型旋盤を任されて…

その図面を見てみると、ワークの端面にフルR溝を入れる作業が指示されていました。専務に新しい工具を頼んだようですが、購入は叶わなかったようです。溝入れバイトの製作を任された私は、前回の失敗を挽回する絶好のチャンスだと感じ、意気揚々と、工具箱からろう付けされた超硬バイトを取り出しました。

そして、図面に示された形状に合わせて丁寧に研いでいきます。研ぎ終わり、Eさんのところへ持っていくと、加工もして欲しいと言われ追加工。無事加工も完了し、再度Eさんに伝えると感謝と会社の愚痴を聞かされました(笑)。

入社から半年の月日が流れ、入社当時すごいと思っていたことも、実はそうでもなかったり、徐々に会社の良くない部分も見えるようになってきました。例えば残業は40時間まで、それ以上はタイムカードに記入するな!(労働基準法違反)とか

そんなある日、大ベテランのYさんが1週間ほど会社を空けるので、Yさんの代わりに大型旋盤を任されることになります。バランサー(重り)を取り付けて重心を考えながら4つ爪で偏心加工を行うのですが、職業訓練校時代から4つ爪は使っていたので、特に苦労せず加工を終えました。

しかし、何故かここからベテランのNさん(直属の上司)の態度が急変します。大型旋盤がすんなりできたことが気に食わなかったらしく、しばらくの間、他の仕事のことで聞きに行っても教えてもらえなくなりました。

さすがの私も理不尽な対応に腹が立ち、思い切ってケロさんに電話で相談。「ケロさん、聞いてくださいよ!」申し訳ないと思いながらも今回ばかりは愚痴を聞いてもらいました。ちなみにそんな電話をしたのは今回が初めてです。そしてたっぷり聞いてもらった後、ケロさんが、「うち見学来る?

次回、とんこつ再転職?編。お楽しみに~

20231225日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は12.1万人(2023年12月21日現在)