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けんかっ早いけど人が好き Vol.65

カレー鍋事件

年末はダイハツの認証試験の数々のズルが公表され、自動車業界大激震である。

ダイハツに限らずこうした会見は今、会場に出向かずともリモートで見られるようになっている。会見の数時間前に我々ジャーナリストの元にもメールが届くのだ。数時間前なので気づかないこともあるけれど、会場に行かなくていいしアプリの挙手機能を使えば質問もできる。今回はタイミングよく見つけたので締め切り真っ最中の原稿を脇においやり、家のパソコンで見ることにした。

無意識に間違いを誘発するレイアウトに異議あり!

私の知る限り、ダイハツの技術者はすごく律儀でまじめな人が多い。なのに、そんな彼らが不正をしなければならない状況を思うと悲しくなる。なにやってんだ、組織は、経営陣はと憤怒で爆発しそうになっていたら、あれ、焦げ臭い?私の憤怒もリアルに五感で表されるのかと一瞬、思考がバグったものの、思い出した。カレー鍋だ!

あわててキッチンに走る。するとカレー鍋のふたの隙間から、もうもうと黒煙が噴出しているではないか! ぎゃー! なんてこった。

しかし、言い訳をさせてもらおう。これにはコンロの点火スイッチが大きく関係しているからだ。我が家のコンロは三ツ口で左から順に大・小・中と山型に配置されているのだが、コンロのスイッチはなぜか、小・大・中と並んでいるのである。小さいコンロ上のやかんのお湯をわかすつもりでスイッチを入れたのに、完成したカレー鍋の置かれた大きなコンロに火をつけていたというわけだ。実は、これ、ときどきやらかしていた。ゆえにシールを貼って対策をしていたというのに、ダイハツの会見見たさで、あわてたのである。こんなレイアウトじゃなければ間違えなかったのに、おかしいんじゃないの? 人間工学的にどうなのよ!

三日分の食料をパーにし、家のなかはとんでもなく焦げ臭い。原稿が切羽詰まっているというのに、鍋掃除の手間も増えた。踏んだり蹴ったりだ。しかし、わかっている。そもそも、火をつけたコンロから離れた私がいちばん悪いということを。

自分はぜったい大丈夫。その油断がオレオレ詐欺にもひっかかる。今後は、飲んだら乗るな、点けたら離れるなを、徹底します、はい。しょぼーん。

2024125日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)