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松浦機械製作所 取締役 DX推進室長 松浦 悠人 氏

自社デジタル化推進で筋肉質の企業体質目指す

工作機械業界でさまざまな次世代への取り組みが行われる中、自社のデジタル化を積極的に進めているのが松浦機械製作所。経済産業省による「DX認定事業者」に選定された同社のDX先導役でもある松浦取締役に話を伺った。

――昨今の受注環境についてお教えください。

「極めて良好だと感じています。国内は半導体製造装置関連を中心に4月までたくさんの受注を頂きました。5月に入り落ち着きましたが、補助金などの後押しもあり一定数の受注を取れています。海外も順調で、特に最近はひとつの案件に複数台といった大口の受注が目立ちます。特定の企業の勢いというのを強く感じています。

しかし、調達面ではかなり苦労していますし、感染症による生産への影響などもあり、受注残は増加傾向にありmす。一方で、米国主導で行なわれている利上げの影響もあり、設備投資も落ち着いてきた印象がありますので、このままの景気が続くとは考えていません。今後はどういった機種を作るのか、どれくらい在庫を持たせるのかといった部分も視野に入れつつ、アクセルとブレーキを同時に踏むようなコントロールが求められると感じています」

――セグメント別で好調と感じているのは。

「ヨーロッパですと少し前は東欧で需要が急拡大しました。またオランダの半導体製造装置関連からは、高機能で一台あたりの単価が高い機種へのニーズが目を引きました。北米はバラエティに富んでいて、多様な業種からの引き合いを頂いています」

――生産現場はフル稼働の状況かと思います。

「受注残も積み重なっておりますし、しばらくは忙しい状況が続くと考えています。海外からは『売りたいけどタマがない』と言われていますし、生産面の強化は喫緊の課題として捉えています。現在も新たな設備や機械を導入するなどして、供給体制を順次強化している状況です」

――貴社ではDX推進室を創設し、松浦取締役自ら室長に就いていらっしゃいます。立ち上げの経緯をお教えください。

「本来、米国駐在を考えていたのですが、コロナで立ち消えになってしまいました。同時に従来の営業スタイルも大幅な変革を余儀なくされ、デジタルでのマーケティングが必要不可欠となり、DX推進室を発足させました」

――室長自ら動画の制作にも取り組まれています。

 「とりあえず出来るところから、ということで動画から取り組みました。まずはどんな動画が必要とされているか社内アンケートを取ったところ、多数の要望がありました。これを外注するとなると時間もコストもかかります。そこで自分たちで制作に取り組むことにしました。実際に自分の手を動かしてみることで、様々な課題が見えてきますし、今後自社で制作できるようになるメリットも計り知れません」

■新機種は使いやすさを追求

――動画活用などの取り組みが評価され、昨年には福井県内初の「DX認定事業者」として認定されましたが、今後のデジタル面での投資についてお聞かせください。

「従来使っていた基幹システムは、量産品を扱う製造業向けのもので、当社の生産には合わない部分が多かったんです。その結果、各部署で機能補完するようなソフトを入れるなどして、無理矢理動かしていました。これをすべて見直す方向で検討、導入を進めています。

これまで当社は、工程表や部品表が分かりにくい部分が多々あり、生産計画の変更などに即応できない面がありました。今後は部品表から設計思想の在り方まで変えていかなければと考えています。コンサルさんやベンダーさんからは「第二の創業だと思ってください」と言われるボリュームになっていますが、結実した時に社内を大きく変革することに繋がっていくと確信しています」

――近年では、工作機械業界にも環境負荷の低減が求められています。

「当社でも工場の改築時における太陽光パネルの設置やクリーンエネルギーの採用などを検討しておりますが、具体的な対応策を実践するには至っていないのが現状です。一方、お客様からは、加工にかかる消費電力をモニタリングしたいといったお話を頂きました。こちらはエネルギーコストが高騰しているドイツのお客様からの要望なのですが、ひとつの加工あたりのコストが分かるような機能を盛り込んだものを提供したケースもあります」

――2ヵ月後のJIMTOFに出展されますが、見所を教えてください。

「従来以上に使いやすさを追及した機種を出展します。当社はマルチパレット+5軸機のパイオニアという自負もありますが、自社の足りない点も含めて根本的に見直したものを現在開発中です。またAMエリアにはLUMEXによる当社の積層造形ソリューションを出展しますので、ぜひ実際に会場でご覧頂ければと思います」

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松浦機械の5軸加工+マルチパレット機

2022910日号掲載)