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ベッセル 企画開発部 長田 吉生 次長

現場の声活かし大ヒット製品へ

数多の現場におけるプロフェッショナルたちが「このカタチで無ければしっくりこない」と口を揃えるのがベッセルの「ボールグリップドライバー」。作業中の肉体的負荷を約2割低減するデザインは90年以上前に生まれた「電工用ドライバー」から受け継がれ、1984年の誕生以来、進化を続けてきた。 

進化続ける「電ドラボール」 

そのDNAを受け継ぐのが2018年に発売された「電ドラボール」。ホームセンターを皮切りに爆発的なヒットを記録。瞬く間に売り切れ、一時はオークションサイトや個人売買アプリでは定価の数倍の価格で取引されるプレミアアイテムとなった。 

ベッセル企画開発部の長田吉生次長が、ヒット商品誕生の経緯を語る。

「一日に多くのネジ締めを行う電気工事の方から『スピーディなネジ締め作業を行いたいが、電動のインパクトドライバーでは力が強すぎて、端子台を壊してしまう』というお声を頂きました。そこで早締めは電動で、本締めは手動でという『電動プラス手締め』という新しい工具の開発に着手しました」 

様々な検証を経て、停止するトルクを端子台を壊さない2Nmに設定。作業者が自分の手で最終締め付け確認ができるようにした。本体は現場で馴染み深いボールグリップを採用し、繰り返し作業の負担にならない重量やサイズ感とした。さらには暗所でも使えるよう先端部を照らす高輝度LEDライトの搭載や、移動中でも手軽にチャージできるUSB充電の採用など、圧倒的な使いやすさと機能性を両立させた。 

かくして、ハンドツールでは記録的な大ヒット製品となった電ドラボール。だが、販売数が伸びていくに従い、想定外の事態も起こった。

「普通に使用されるぶんには全く不具合は生じないのですが、現場によってはかなりハードにお使いになられることもあるようで、ギア部品や本体が損傷してしまうことがありました。そこで、『電ドラボールプラス』では筐体の構造を見直し、内部のギアに厚みを持たせました。また、高所での作業に対応できるよう、尻手部分に落下防止コードを取り付けられるようにしました。さらに、充電ポートをUSB-BタイプからUSB-Cタイプに変更し、より充電ケーブルを挿しやすいように改良しています」 

2020年には無負荷回転数1200回転/分というハイスピードタイプも追加。こちらは自動車関連の大手ティア1企業のEV関連パーツ組み立てラインにも採用されるなど、最先端のモノづくり現場にも活躍の場を拡げている。 

発売から4年を経て、いまなお進化を続ける電ドラボール。その根底にあるのは作業者の負担を軽減し、高品質で誰でも使いやすい工具を、という同社の思いだ。 

長田次長は「電ドラボールも『愛着があるから修理したい』というお声を数多く頂きますが、実際に修理すると新品を購入するのと変わらない値段になってしまいますので、お断りさせて頂いているんです。こうしたお客様たちが『以前持っていたモノよりいい』と思っていただけるよう、細部や見えないところも改良し続け、より良い製品をお届けするのが、当社の使命です」と力強く語ってくれた。

(2022年11月25日号掲載)