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山善 代表取締役 専務執行役員 佐々木 公久 氏

取引先と共に進めるCO2削減、「コーポレートPPAモデル事業」スタート

再生可能エネルギー導入の新たなスキームとして注目されているPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデル。PPA事業者と契約することで、太陽光発電設備を初期費用ゼロで導入でき、メンテナンスもしてもらえる仕組みだが、山善はDaigasエナジーと提携しこの分野へ挑戦する。その参入に至る経緯と現在の導入状況、さらには同社が目指す取引先を巻き込んだ脱炭素化への意気込みを、佐々木公久専務に伺った。

――貴社における環境への取り組みをお聞かせ下さい。

「当社では2005年に住建部門で『エコブランドキャンペーン』を立ち上げ、削減CO2の買取りをスタートしました。2007年には生産財部門でもエコブランドキャンペーンを開始し、これを2008年の『グリーンボールプロジェクト(GBP)』へと発展させました。こちらには生産財、消費財を問わず多くの企業に参加頂いております。さらに2021年には社内にグリーンリカバリービジネス部(GRB部)を立ち上げました」

――GRB部とはどのような部署なのでしょうか。

「近年、SDGSへの取り組みやESG投資など環境ビジネスが急拡大する中、GRB部はグリーン成長戦略の企画立案・実行を通じて顧客とともに脱炭素化を目指しています。その取り組みの第一弾として参入したのがコーポレートPPAモデル事業です」

――PPA事業についてお聞かせ下さい。

「従来、企業が再生可能エネルギーを調達するには自社投資で電源を用意するか、再エネ電源を電力小売会社から調達するしかありませんでした。このPPAモデル事業は新たな電力調達の手段で、事業者がクライアントの施設に無償で太陽光パネルを設置し、クライアントは発電した電力から使用に応じて料金を払う方式です。クライアントは太陽光発電にかかる初期投資や管理費が不要になるなどローリスクで大きなメリットが得られるのが特徴です」

――昨年10月からはDaigasエナジーと共同ブランド「DayZpower」を立ち上げました。

「当社はこれまで太陽光パネルの販売・設置事業を行っており、一定のノウハウがあります。一方でエネルギー供給に関しては知見に乏しい。そこでエネルギー供給のプロでもあるDaigasエナジー様と業務提携し、誕生したのがDayZpowerです。これにより従前の太陽光パネルの自社保有の請負に加えて、PPAモデルとDaigasエナジー様からの外部調達の3方向から再エネ供給のご提案できるようになりました。」

――早くも受注が決まったと聞きます。

「当社も深くお付き合いさせていただいている日本製紙クレシア様の開成工場(神奈川県)にご導入いただきました。日本製紙グループ様はかねてより自社の脱炭素化に積極的に取り組んでおり、このたび縁あって当社のスキームにご賛同いただいたかたちになります」

■脱炭素サプライチェーンの形成へ

――PPAモデルの導入でクライアントにはどういったメリットがあるのでしょうか。

「太陽光設備はすべて当社で負担・設置しますので、クライアント様は初期費用ゼロで導入できます。またメンテナンスも当社で行いますので、安定した運用が可能です。また契約期間中は原則、固定の電気代になりますので、生産コストの予測・計上がしやすくなります。昨今のエネルギー価格高騰で、燃料調整費も上昇の一途を辿っていますが、その点20年間電気代が変わらないというのは大きな魅力のひとつだと思います。そして、コストメリットとCO2排出量削減を両立し、企業として、環境負荷を減らせる点に尽きると思います」

――貴社と日本製紙クレシアさんの関係性からすると、両者にとってWIN―WINCO2削減になりますね。

「再エネ調達はScope2削減に位置付けられますが、それに加えて、日本製紙クレシア様は当社から見て仕入先として、上流のScope3の立場になり、クレシア様側から見た当社は代理店として、下流のScope3となります。よって、双方にとって、Scope3であるサプライチェーンとの協働によるCO2排出削減が実現したケースと発信することができます」

――今後は貴社と取引のあるメーカーを中心に積極的な働きかけをしていくのでしょうか。

「これまでカーボンニュートラルやSDGSCSRの一環といったボランタリー的に捉えられてきました。しかし、今期より東京取引所の市場改編に伴い、コーポレートガバナンス・コードが改定され、上場企業には気候変動対策の開示が求められるようになっています。また世界的にも脱炭素に向けたサプライチェーン全体での取り組みが重要視されており、企業規模を問わず脱炭素化に対応しなければならない状況になってきています。だからこそ、当社も、志を共にするお取引様とがっちりスクラムを組んで、サプライチェーン協働による脱炭素を実現していきたいと考えています。今後も、PPAモデル事業のみならず、専門商社としての数々の脱炭素ソリューションを提案していきたいと考えています」

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(2022年12月10日号掲載)