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Okamoto(THAI)CO., LTD. 取締役 プロダクションマネジメントセクション ゼネラルマネージャー 櫻井 英之 氏

素材から組み立てまで一貫体制の強み
木型と鋳物の内製で高剛性な機械を

研削盤メーカーのパイオニアである岡本工作機械製作所。モノづくり業界を支える高品質・高精度な研削盤を生み出してきた。1986年に設立したタイ・アユタヤのOkamoto(THAI)CO., LTD.では月産1800㌧もの生産能力を誇る鋳物工場での鋳物の生産、機械の組み立てまで一貫した生産体制を築いた。取締役櫻井英之ゼネラルマネージャーに話を聞いた。

――最近のタイの業況は。

「好調だった昨年と比べると、あまり良くはありません。業種にもよりますが、東南アジアでは弊社に限らずどのメーカーも同じ状況。ただ受注残があるので生産はある程度は動いています」

――OkamotoTHAI)で生産している機械は。

「平面研削盤では小型、中型モデルの製造が主です。ここで生産した機械はアメリカ、日本、ヨーロッパ、東南アジア、中国とすべての地域に出荷しています」

「生産能力としては月産100~120台を作る能力がありますが、最近は80台ほどの出荷にとどまっています。しかし、半導体需要の高まりからシンガポールの工場で生産している大型平面研削盤やロータリー研削盤が増えています。シンガポール工場がキャパオーバーとなりリードタイムが伸びていますので、タイ工場へシフトして生産をカバーしています。他にも大型の研削盤はEVの中国市場に需要があり、非常に生産が立て込んでいます。こちらもタイ工場で生産カバーするなどし、小型中型の平面研削盤の生産が減った分を補完するというのが今になっていますね」

――当時の日系企業では先駆けとして1973年にシンガポール工場、1986年にはタイ工場を設立されました。

「このタイ工場はシンガポール工場の予備工場的な位置づけで始まりました。機械を組み立てていたシンガポール工場で、当時シンガポールで調達していた鋳物が仕入れ元がなくなり、タイ国内の鋳物工場から調達する流れができました。ならばタイで付加価値をつけて機械加工をしてシンガポールに送ろうというところからだんだんと拡張、発展して今へと至り、現工場の敷地面積は7万平米、従業員数は920人となりました」

――木型や鋳物も内製し、素材から組み立てまで強い一貫体制を築かれています。

「木型をベースに砂型を作り、完成した主型に中子を入れ、鋳型を組み立てます。その後注湯作業を行います。溶湯が冷え固まった後に鋳型から鋳物を取り出します」

「生産機に使用する部品の歯車やネジも自社で手がけており、内製化率は非常に高いです。月産1800㌧の生産能力をもつ鋳物工場は、工場に訪れるお客様も興味深く見られます。鋳物の木型は木や樹脂で作っており、世界各国の工作機械メーカーのオーダーにも応えています」

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ローラーコンベアによる鋳物工場の生産ライン。木型から砂型をつくる

――世界の工作機械メーカーを支えているタイ工場ですね。

「木型の在庫だけでもかなりの数になります。だんだん手狭にはなってきましたね(笑)」

■日本で従業員の技術力伸長

――技術面の人材教育は。

「今で言う技能実習生のような形を先駆けて行っていました。もう何十年も前からタイ人を日本で研修させてきています。様々な機械の組み立てや技術を覚えてタイへ戻る、という風に。今のタイ工場の組み立てのメンバーもほとんど日本に行ったメンバーですね。組み立てだけでなく、機械加工や塗装部門においても同じです。また、機械精度の鍵となる摺動面のキサゲ仕上げ技術は、日本の技術に劣らないレベルに達しております」

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機械の摺動面に施すキサゲ加工。「高いところだけを削り、細かく取りながら調整します。機械の精度出しの基礎となる工程です」(櫻井ゼネラルマネージャー)

「日本人がメインとなり現地へ出張し技術を教えるといった短期間ベースのものではなく、タイ人が日本へ行って年単位のスパンで技術を身につけてもらう。機械品質を安定させるためそういう取り組みを行っている点も、うちの特徴ではないでしょうか」


ひとこと


鋳物の基となる材料を、1500度もの温度となる炉(手前左)で溶かす。熱気に包まれる迫力のある風景は圧巻。2006年に新たに鋳物工場が作られ、月産1800㌧の生産能力をもつ。「岡本グループで使う鋳物は3割程度で、残りを国内外の工作機械メーカー、鋳物関連の業者などへ外販しています」(櫻井ゼネラルマネージャー)と言う。

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