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シチズンマシナリーアジア(CITIZEN MACHINERY ASIA CO., LTD.) 取締役 シニアゼネラルマネージャー 丸山 努 氏

シンコム機のグローバル拠点、生産力強化で月産350台へ
充実した従業員教育と綿密な品質テスト体制

CNC自動旋盤のシェア世界1位のシチズンマシナリーは、日本本社のほかに、中国・タイ・フィリピン・ベトナムとアジアで4つの生産拠点をもつ。中でもタイ・バンコク北東部のアユタヤに位置するシチズンマシナリーアジア(CMA)は主軸台移動型自動盤シンコムブランドのメイン生産工場として、世界各地域への供給拠点も担う。2001年の工場開設から工場の増築・増床を重ね生産力拡張を続けるCMAだが、働きやすい環境づくりにも力を入れている工場でもある。今年2月には工場棟を新設し、生産体制をさらに強化した。取締役丸山努シニアゼネラルマネージャーに現地で話を聞いた。

――シチズンマシナリーアジア(CMA)の位置づけは。

「ここCMAでは、主軸移動型自動旋盤のシンコムブランドの7モデルを製造し、グローバルな供給拠点として世界各地へ出荷しています。2001年の創業以来、工場増床を続けており、現在、新棟含め敷地面積は62938平方メートル。21年には累計出荷台数2万台となりました。また、ASEAN各国やインドへの販売とエンジニアリングサービスを提供する中心的な役割も担っています。昨年は新たに社屋のエントランスに、ミヤノブランド含む13台のショールームスペースを備えました。お客様のテストカットも行えます」

――世界各国への出荷割合は。

「比率が高い順に並べると欧州、ASEAN、米、それから日本、台湾、インド、韓国。中国においては中国工場が地産地消している形です。23年は特にASEANが非常に低迷しており、欧州・米の比率が高くなり、CMA全体の約60%となっています。インドは22年に5%でしたが9%に増加しました」

――今年2月に新工場棟を増床されました。

「工場の設立以来、加工棟や組立棟を増床してきましたが、更なる生産能力増強のため今回の増床を行いました。月産250台から350台の生産能力を確保しています。今後、組立てに必要な人員増も状況に応じて行います。増床で生産ラインを伸長し、新棟は日本から送られてくる部材を保管するストア(倉庫)としています」

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2月に増床した新棟は日本から送られてくる部品の倉庫スペースに。すべての棚に責任者が決められている。

――最近のタイの業況は。

24年前半までは厳しい状況が続くでしょう。しかし大局観としてはいずれ半導体にしろ自動車にしろ数は確実に増えてくる。その波についていけるよう、新しい要素の開発や技術開発を行っているところです。世界がEVにシフトしていくにしても、様々な分野のモノづくりで自動旋盤の出番はありますから」

「そのために今は設備投資をしていき、工作機械需要の次の山に備えます。これはグループ全体の話になりますが売上1000億円を目標として掲げるなかで行っている投資が今回の新棟増床です」

CMAは今後増えていく機械需要の生産台数の大部分を担う主役の工場です。インドは出荷数も増えており有望な市場ですが、我々が出荷する機械は欧米がメインのお客様です。欧米が求めるシチズン製品をこの工場で生産していくことが重要だと考えています」

――生産体制について詳しく聞かせてください。

「主な基幹部品は日本から供給しており、ベトナムとフィリピンから鋳物を調達しています。タイ現地では鋳物も調達しますが、板金や加工品、ケーブルの一部調達を行い生産しています。設備はDMG森精機、三井精機工業、それから安田工業のマシニングセンタ、研磨加工では太陽工機の立形研削盤、DMG森精機のターニングセンタ、岡本工作機械製作所の平面研削盤や豊田工機(現JTEKT)の円筒研削盤を保有しています。真円度測定機や3次元測定機で部品の精度を確保しています」

 「組立てをしながら検査し、工程ごとに品質を保証する仕組みを構築しています。最終品質検査としてテストピースを削り精度や油漏れについて全台数確認してから出荷しています。日本から毎週届く60~70台分の部品を新棟の倉庫で保管します。すべての棚に責任者を定め、責任区分を顔写真やフローで分かりやすく明示しています」

■教育体制注力で人材定着

――社内教育にも力を入れていらっしゃいます。

「目的に応じた従業員教育、アクティビティーを行い従業員の意識を高める活動を展開しています。我々はQCDT活動と呼んでいますが、品質に関する意識向上の活動(Quality Minded)、年次の改善発表会や優秀グループ表彰などによる継続的改善(Continuous Improvement)、そして教育や訓練(Disciplines)としては現在367名の社員全員で毎朝朝礼を行い、体操しています。最後はTeamwork&Trust。チームビルディング活動といった宿泊研修、スポーツ大会やイベントで信頼感を醸成します」

――人材確保のために工夫されていることは。

「タイ人はステップアップを狙った転職が多いですが、うちの工場の従業員は定着してくれていますね。工場環境の整備やQCDT活動の成果だと受け止めています。採用活動は、Webによる情報発信を行っています。東南アジアではSNSが発展しており、そこでの呼び掛けや福利厚生や職場環境のPRも効果があります。弊社は自社HPがあるのですが、自社サイトの問い合わせフォームからのコンタクトで応募に至るケースもあります」


ひとこと


CMAでは倉庫管理の責任者だけでなく、社内インフォメーションの掲示物にも責任者が振り分けられる。赤やピンク、青でカラフルに飾り付けられた掲示板からも普段の活気がうかがえた。従業員同士和やかなムードで、きびきびとしながらも快適に働いている様子も印象的だった。

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