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大日金属工業 取締役社長 栗田 実 氏

ユーザー本位のモノづくりが信条

ラインを強化し生産数を伸ばすといった量産メーカーのスタイルとは違います。過去から一品一品、受注生産を重ねてきました。この姿勢は変わりません―。そう栗田社長は確認するように話す。大日金属工業は工作機械メーカーとしてワークサイズで中・大型ものや、長尺ものを対象にした独自色の強い旋盤をずっと作り込んできた。その自社の「得意」を武器に、今後の展開を描く。

――最近の事業環境はいかがですか。

「おかげさまで過去ベスト5に入る受注/売上が続いています。ただ生産キャパからいって、ここから大きく実績が伸びる感じではありません」

――もう限界に近い繁忙ということですか。

「主軸台やベッドといった機械の主要部品は殆どが内製で、有数の技術者が2台の超精密研削盤で丁寧に仕上げ加工を行っています。このスタイルを貫く限り、量は追えませんね(笑)。でもこれが私たちのスタイルです。堅実というか、地味と言われるかもしれませんが、ユーザーに満足してもらうための丁寧なモノづくりをモットーにしています」

――今後も変わらない?

「基本姿勢は変わりませんね」

――ただトピックとして、EV用電池に絡み、御社には相当の引き合いが寄せられていると聞きます。そうした特需にも応える必要はありますよね。

「おっしゃるようにEV電池部品のセパレータフィルムに関係し、長さ6~7㍍になるロールの外径加工が必要ということで、当社長尺旋盤への問い合わせが増えています。もっとも、フィルムメーカーの一部は確か相当に強気ですが、この需要が何年も続くかどうか懐疑的な見方もありますね。ユーザーサイドも機械投資に慎重な面がみられます。当社としてはできるだけご要求に応えるよう努めますが、かといって思い切った増産体制に乗り出すなどの判断はしていません。水ものというと語弊があるけれど、変化が続く時代にあって、目先的な変化を追うわけにもいきません。それに当社としては、幅広いユーザー層で過去から支持いただいている心間1000~1500サイズの旋盤を、引き続きボリュームゾーンとして育てたいと思っています」

■主力機に付加価値を足す

――御社はイメージ的に、長さ(心間距離)10㍍を超すような長尺NC旋盤が得意分野のように思えますが。

「そういう面も確かにあります。けれど当社旋盤の累積出荷台数約35万台のうち、長尺タイプは2割程度で、3分の2にあたる約2万台が3㍍までのサイズなんです。機種で言えばDLシリーズ(=写真)などに含まれます。時代が変わろうとも、このサイズの旋削加工需要はコンスタントにあるということです。何よりまず、このゾーンで市場要求に応えることを大切にしたいと思います」

――具体的な強化策は?

「ひとつには、単品ものを得意としたマシンに、数ものもこなせる機能をつけることです。単品加工からある程度の量産加工まで守備範囲を広げて、お客様にとってより役立つ機械にしていきます。ワークを搬入・搬出するロボットとの組み合わせも進めており、これは今秋名古屋で開催される工作機械見本市(メカトロテックジャパン)で具体例を披露する予定です」

「他方では、資源の有効活用につながるオーバーホール/レトロフィット事業を今まで以上に本格化させます。ベアリングやボールねじなどの交換、NCの入れ替え等を通じ、老朽化した中・大型機を新品に近い状態と性能に蘇らせます。ユーザーの皆さん、愛着を持って機械を使っていただいているので、きっと満足いただけると思います。先ほど申し上げた単品加工主体の機械に量産機能を付加したり、古い機械の性能を強化したりといった取り組みは、当社のモノづくり技術やインテグレーション機能を高めることにもなると感じています」

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主力機種を磨く。写真はDL530

2023310日号掲載)