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ムラキ 代表取締役社長 山本 信司 氏

ロボでのバリ取りへツール提案

50年ほど前から超硬バーを手がけるムラキ。「MRA超硬バー」はシェア1位を誇るが、そこには「ニッチを極める」という同社の信念がある。その武器を生かして近年注力しているのが、マシニングやロボットなどの自動機向け製品の開発だ。1月には自動機用のバリ取りホルダを出し、刃物とツーリングを一体で最適提案できる体制を整えつつある。

――近頃の景況感を教えてください。

「当社は輸入が多いので、原材料価格や物価が上がっている中、昨年の急激な円安の状況はかなり厳しかったです。直近少し戻してきていますが、昨年初めの100円代前半の頃から比べると現在の為替レートでも少し影響が残っています」

――山本社長は20219月に就任されました。

「創業115周年の節目の社長交代となりました。コロナ禍真っ只中であったこともあり、昨年、一昨年と市場環境があまりよくない中でのかじ取りに苦労しました。今年は展示会などリアルで商談できる機会も増えてきているので、後半にかけて少しずつ快方に向かっていくとみています」

――昨今のEV化の流れをどうとらえていますか。

 「いつEVに本格的に切り替わるのかが論点になると思います。当社にとっても自動車業界のウエイトは大きいので、EV化が進んで内燃機関やミッションがなくなる状況を危惧しています。日本では2035年までに新車販売を全て電動車にすると言われているので、この5年、10年ほどで緩やかに変わっていくとみていますが、うかうかはしていられないと考えています。他にも不確定な要素が多い時代ですので、EV向けに限定することなく、全方位的に新たな業界・業種への提案や開拓を進めています」

■自動化はツール選択がカギ

――現在力を入れていることは。

「バリ取りの自動化に対応する自動機用バリ取りホルダ『でばりんMC』を1月から販売しています。現状、製造現場でのバリ取りは手作業で行っている企業が多いです。しかし、ここに来て世界的な労働賃金の上昇に加え、人手不足が深刻化してきています。でばりんMCはマシニングセンタやロボットなどに取り付けることで、超硬バーやブラシなど使って自動でワークの輪郭を倣いながらバリ取り加工を行えるもの。人の作業の置き換えだけでなく、プログラミングの簡便化やワークを乗せ替えの省略など、作業工程の最適化などにもつながります」

――他社製品との違いを教えてください。

10㍉伸び、縮みするフローティング機構を内蔵していることや表と裏のバリのどちらにも対応していることも特徴ですが、超硬バーを付けた場合、回転数が高い方が仕上がりは良くなるため、最高回転速度が業界最速クラスの毎分15千回転というのは大きな強みです。

加えて、より高精度な刃径公差と自動機に適した刃形状を採用したマシン・ロボット用の超硬バー『MPシリーズ』も出しています。フローティング機構である程度の凹凸はカバーできるのですが、適した工具を使わないと処理の粗がどうしても出てしまいます。自動化をしっかりと進めていくには工具の先端側の工夫も必要となりますので、超硬バーも扱う当社だからこそ、最適な刃物とホルダの組み合わせで提案ができると考えています」

――マシニングや専用機、ロボットに対応するとのことですが、一番活用が広がりそうなのはどれですか。

「ロボットの活用が確実に増えてくると思います。マシニングや専用機でのバリ取りは今までもありますし、現場それぞれの状況に対応しやすい点や機械からのワークの手離れをよくできる点などロボットならではのメリットも多いです。当社では、インフィニティソリューションズさんなどのロボットSIerさんをはじめ、関連企業とコラボレーションをすることで、ロボットと一体での提案にも力を入れています」 ――中長期的な展望を教えてください。

「これまでもずっと当社の方針であった、最大より最良、ニッチを極めることをこれからも愚直に進めていきます。大手がやらないような隙間でナンバー1を取り、業界を照らす存在になりたいと思っています」

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自動機用バリ取りホルダ「でばりんMC」は表バリ用と裏バリ用の2種類用意する。ATCなどを活用することで、ワークの置きなおしなどを極力減らすことができる

2023310日号掲載)