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赤松電機製作所 代表取締役社長 赤松 竜太郎 氏

メンテ性と捕集効率極めたミストコレクター

モーターを扱う事業として、大正14年に創業した赤松電機製作所。モーターを利用した送風機事業を時代や産業の変化に合わせて進化させ、現在はミストコレクターを中心とした環境改善機器メーカーへと発展。社名に引けを取らない認知度を誇る「ONIKAZE」ブランド製品を世に送り出している。そんな同社が新たに提案するのが、メンテナンスの省人化と高い捕集効率の両立を実現した「スマートミストゼロ」だ。

――直近の受注状況はいかがでしょうか。

「コロナ禍の混乱から回復し、工作機械の受注も伸びています。当社の主力であるミストコレクターも、足並みをそろえる形で受注が増え、2022年度の売上高は前年比約20%増と堅調に推移しました。ただし内訳をみると、半導体関連が好調だった半面、本来われわれが主戦場とする自動車関連が低調であるなど、手放しでは喜べない状況です。2023年度の景況は、多少冷え込むのではないかと見ています。半導体関連の需要も落ち着くでしょうし、自動車関連の投資控えは続くと見ています」

――ミストコレクターのニーズも多様化してきているようですね。

「これまで当社は、業界最高クラスのミスト捕集効率を実現したフィルター式の『ヘビースモーカー』や、メンテナンスフリーに近づけたフィルターレス式の『スマートミストマジック』をラインアップしていました。しかし、加工現場の人手不足が続く中、フィルター式には『フィルター交換のメンテナンスが大変』という声が、またフィルターレス式には『より働きやすい環境を構築したいから、もう少ししっかりオイルミストをキャッチして欲しい』といった要望が上がっていました」

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スマートミストゼロ

――そのうえで「スマートミストゼロ」を新発売されました。

「フィルターレスで、捕集効率をどこまで上げられるか、を追求した機種になります。従来機の『いいとこどり』というと、わかりやすいかもしれません。1マイクロ㍍の微細ミストまで99%捕集できます。フィルターレスで捕集する方法はいくつかありますが、遅かれ早かれ汚れはつきます。新型機は新開発のロータリーマジック機構を高速で動かすことで捕集と清掃を同時に行いますので、極めて汚れが付きにくいのです」

――実証実験などはされましたか。

「従来のフィルター方式ですと2カ月で交換が必要になってしまう、かなり条件が厳しい金属加工現場でスマートミストゼロの稼働実験をしましたが、半年たっても汚れは全くついていませんでした。また洗浄用の逆洗配管を標準装備していますので、オプションの自動洗浄を用いることで、ほとんど人の手でメンテナンスをする必要がなくなります」

■状態可視化でメンテを楽に

――ミストコレクターの稼働可視化も取り組まれています。

「工作機械など製造現場のデジタル化が進む中、ミストコレクターだけがアナログで、運転状態のチェックは人手に頼っていました。スマートミストゼロには、『目詰まりセンサ』をオプションで用意しました。この機能を工場内のネットワークなどに接続することで、ミストコレクターの稼働状況を把握できるとともに、適切なメンテナンス時期をデジタルで可視化できます」

――自社のDX化にも取り組まれているようですね。

「当社の取り組みに関しては、出荷業務のデジタル化のほか、製品開発においては試作に3Dプリンタを活用しています。今回のスマートミストゼロにおいても、従来に比べ開発スピードが格段に早くなりました」

――ヒュームコレクターの状況はいかがでしょうか。

「特定化学物質障害予防規則の施行に伴う駆け込み需要は一段落しています。ヒュームコレクター導入は『課題として残っているが、換気と防塵マスクでしのげる間は様子見』という小さな事業所は相当数残っている可能性があります」

――まだまだ未導入の現場もあるのですね。

「新規導入の需要を掘り起こすなら低価格機に優位性があります。しかし、当社の『オニカゼヒュームスモーカー』は小型かつ高機能機ですので、『とりあえず入れてみたエントリー機』の性能に満足できないアップグレード需要をターゲットにしています。縦型というのがこだわりで、吸引経路に一定距離を確保することでヒュームからの発火を防ぎます。またフラットな天板を採用し、道具置きに利用できるなど作業者の使い勝手を重視しています」

――中長期的な目標をお聞かせください。

「今年が創業98年ですが、100年が節目という意識はありません。通過点と考え、次の100年を支える仕組み作りに力を注ぎます。待遇面や教育面を充実させ、『安心して長く働いてもらえる』環境整備がすべてのベースとなります。またZ世代にどう活躍してもらうか、です。トップや幹部同士がつながっているだけでは商売になりません。現場で動く若い人が社内外で信頼と協力を得ながら、つながっていくことが次の時代を作ります」

(2023年3月25日号掲載)