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日進工具 代表取締役社長 後藤 弘治 氏

IoT化の伸長に備えさらなる小径化も

刃径6ミリ以下の超硬小径工具市場での高いシェアを誇る日進工具。「『つくる』の先をつくる」をブランドステートメントに掲げ、ユーザーが求める数歩先の製品を常に出し続けることで、精密・微細加工のマーケットを切り拓いてきた。後藤弘治社長に同社の現況と今後の展望を聞いた。

――近頃の景況感を教えてください。

「コロナ前からするとまだ7割ぐらいまでしか戻ってきていませんが、コロナの影響で止まってしまっていたものがそろそろ動き始めています。今年の前半はまだまだ動きが鈍いと思いますが、行動規制が緩和され、旅行や出張などの人の移動の活発化や個人消費の伸長によって、後半にかけて戻してくると考えています」

――国内の個人消費活発化は御社にとってプラスになりますか。

「日本全体のGDP向上の意味で絶対にプラスです。人々の移動が活発化して、様々な商品が求められるようになることは当社にとっても絶対に悪いことはないです。外に出る人が増えれば自動車の購入や買い替えも進みます。ここ数年、日本経済の元気がなかったのは自動車をうまく作れなかったからです。自動車がしっかり売れるようになってくると波及的に他業種にも仕事が回ってきます。そうすると本格的な回復に向かうとみています」

――世界的にEV化の動きが加速しています。次世代モビリティ産業で小径エンドミルの活躍の場はありそうですか。

「当社はエンジン部品との関わりは薄いので、EV化の影響は少ないですが、電動化という意味では当社はFCV(燃料電池車)のFCスタック(発電装置)のセパレーター金型の製作関わりがあります。また、5Gの普及による自動運転や次世代のモビリティ体験に繋がる提案はこれから本格化してきます。そうした技術を支える車載用のセンサやレーダ、カメラなどの搭載数は自然と増えますし、電子部品やレンズの加工に必要となる小径エンドミルの需要も高まります。こうしたIoT化の流れはモビリティ以外の産業や社会でも同様なので、当社としては電子部品加工向けの提案をしっかりと行っていきます」

■既にφ0.01以下のエンドミルも用意

――超微細加工用エンドミル「マイクロエッジ」は最小径100分の1㍉を達成しています。さらなる小径化は必要になってきますか。

PCからスマートフォン、スマートウォッチ、イヤホン、スマートグラスなどへとデバイスは小型化しています。それに合わせて電子部品もより小さくなってきています。当社としても小径化の追求は限りなくやっていくべきです。既に100分の1よりさらに小径のもののオーダーも受けて作っていますし、標準品としても扱える段階にあります。まだ市場には出すには早すぎるので、出すタイミングを見計らっています」

――他社も小径工具に力を入れています。差別化のポイントは。

「当社で一番売れている刃物径が05㍉くらいなので、この前後に様々なバリエーションの製品が標準品としてそろっているのが当社の強み。微細加工や精密な加工に必要な工具は全て賄えるようにしています。他のメーカーさんはボリュームゾーンがもっと上にあるので、当社ほど豊富に小径工具を取り揃えていません。大きなものは捨てて、小径に集中しているので、はじめから狙っているところが違います」

「さらに製品を作っている機械が、加工上の様々な問題を取り除いた自社開発の研削盤TGMシリーズを使っている点も大きいです。例えば1000本単位で量産している製品は、1本目から1000本目まで48時間くらい機械を動かし続けます。その間、機械の伸縮や砥石の減りがあっても、TGMで作ったツールは1本目と1000本目の波形が一緒になる。普通の機械では11本のばらつきがどうしても出てしまう。そういう意味で、TGMシリーズの存在が大きな差別化の要因となっています」

――中長期的に取り組まれることがありましたら教えてください。

「これまで話してきたように、まだまだ電子部品は伸びるので、まずはここをしっかりと押さえるというのが当社の使命です。そこに向けての、より小さく、より精度を追求した製品を出していきます。また、この4年間十分に行えなかった展示会を中心としたリアルでの交流にも再び力を入れていきます」

日本物流新聞2023年3月25日号(リレーインタビュー画像文字追加).jpg

「高硬度鋼の長時間仕上げ加工に最適なCORE LINEのCBNエンドミル」

(2023年3月25日号掲載)