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パナソニック コネクト 熱加工システム事業総括 池谷 啓司 氏

「つながる溶接」でDX実現

パナソニックの持株会社制に伴う組織編成により、昨年4月に「パナソニック コネクト」として発足したプロセスオートメーション事業部、熱加工システム。今年2月には約12年ぶりに溶接ロボットコントローラーをリニューアルした。これまでも世界初のトランジスタインバータ制御方式溶接機やフルデジタル設定・制御溶接機の開発で、時代の殻を破ってきたパナソニックの溶接機。次なる挑戦は、アナログ技術が残る溶接現場でのDX実現だ。

――2022年度の需要動向はいかがですか。

「受注は国内外共に前年より1割ほど上回って着地する見込みです。国内は回復基調にあり、海外は地域によりまだら模様ですが、平均すれば国内と同じ回復傾向になりました。ロックダウンの影響で中国は落ちましたが欧米やインドに勢いが出ています。23年に入ってからもまだ中国は動きが遅れています。とはいえ先日中国に行った時、EVの台数があきらかに増えていたのが印象的でした。EVや電動スクーターへの投資が活発です」

――高まるEV需要で貴社に寄せられる溶接ニーズは。

「主にはバッテリーケースで、アルミ溶接ニーズが高いです。難接合素材のアルミに対して、我々が培ってきたアルミ溶接技術への引き合いは多いです。他には車体軽量化を求めハイテン材やスーパーハイテン材なども要望があります」

――現在、力を入れられていることは。

「今年2月にアーク溶接ロボット『TAWERS』の『G4ロボットコントローラー』を上市しました。前機種『G3』発売から12年ぶりのロボットコントローラーということで大幅に改変し、溶接性能を上げました。全軸の速度を上げてタクトタイムを短縮し、生産性を上げています。さらにスパッタを大幅に低減しました。溶接で大きなコストを占めているのが人件費(=溶接や前後工程を含めた作業時間)ですから、スパッタ処理がラクになればこれも生産性向上に繋がります。今後も機能性を拡大させていく予定です」

写真_G4コントローラー_new.jpg

アーク溶接ロボットTAWERSのG4ロボットコントローラー

――G4では新たにOPC UAに対応されました。

「機能性拡大だけでなく、IoT対応やロボットに様々なセンサーとの連携機能をもたせなければという意識がありました。G4は上位システムや周辺機器との親和性が高く、フレキシブルに対応できます。計測や電流電圧の記録など、溶接データ管理機能の強化にも対応しました」

■溶接の世界にデジタル革新起こす

――新型ロボットコントローラーで溶接現場のDXの第一歩が実現されます。

G4G3で挑戦してきた資産を存分に活かしています。新たなプラットフォーム導入や部品の進化で目指すのは『つながる溶接』です。溶接現場は非常にアナログで技術の伝承が難しい環境にあります。我々には60年以上にわたる溶接事業のなかで電機メーカーとしてデジタル化を取り入れてきた強みと歴史があります。そこに自社のロボット技術を融合させました」

――EV向けの溶接市場を意識されていますか。

EV向けとして限定することなく、溶接現場が変化していくなかで重要な周辺機器との繋がりを高め、お客様が重視する基本性能も向上させています。アピールしたい業種も特に意識はしていません。溶接は裾野が非常に広く、溶接メーカーも自動車から金属加工や、建設機械を手掛けながら溶接も行うなど、ひとつに限定しているわけではないからです。その辺りがある程度ミックスされているため、景気変動や経済状況に対してうまくステイブルに展開できるのが強みとも言えます。一点突破というより、どのお客様でも使えるということを基本にして将来を見据えて通信や機器を強化しました」

――汎用性や使い勝手を重視されたと。

「そうですね。ソフトウェアのアップグレードにより『これまで鉄に特化していたが次は特殊なアルミ、ステンレスの溶接をしたい』という変化にも応えます。多品種少量生産な時代だからこそ多様な対応力を溶接機からロボットコントローラーにももたせています」

――労働力不足や自動化需要にデジタルで応えていくと。

「当社はオートノマスファクトリーをコンセプトに挙げています。人に依存している部分をデジタル化し、モノづくりできるところが我々の利点です。生産現場は絶えず変化させる必要がありますが、人の手では時間がかかり場合によってはチャンスを逸してしまう。そのような面の機能改善にも我々の溶接製品で応えていきます」

(2023年3月25日号掲載)