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加茂精工 技術部 技術課 課長 片山 嘉丈 氏

転動面となる歯面が重要、「転がる面を綺麗に仕上げる」

売上高の7~8割を占めるラックアンドピニオン(TCG)を中心に、それと組み合わせて使える差動式減速機やボール減速機、インデックスを製造販売する。受注生産で多品種変量対応や特注対応に強みをもつ。同社で初となる大型差動式減速機の受注を昨年12月に始め、対応力を増している。

1年前に導入した5軸仕様の安田工業製MCを紹介する片山嘉丈課長

――貴社は減速機メーカーとしては珍しく、専用機よりもマシニングセンタ(MC)をたくさん汎用的に使っていらっしゃいます。

「ここ本社工場では5軸機1台を含む高精度のMCを十数台保有しています。当社の減速機のギアは通常のギアの歯形状とは異なり、丸みを帯びた溝とスチールボールを歯の代わりとしています。(減)速比によっても形が変わるため、MCで面の仕上げまでを含めて加工しています。他社メーカーでは規格の定まったギア加工が多いので歯切り盤をお使いのようです」

「本社工場では減速機やインデックスのほか、主力のラックアンドピニオンのローラピニオンなどをつくっています。ラックアンドピニオンのカムラックは出雲工場(島根県出雲市)が専用工場として仕上げまでを担っています」

――貴社の減速機の主な用途は。

「主力のボール減速機(BRシリーズ)は溝の間のボールが転がりながら力を伝えるのでバックラッシがなく、伝達効率がよく、音が小さい(打撃音でなくボールの転送音)ためテーブルの位置決めなど多用途で使えます。昨年12月に受注を始めた大型の差動式減速機『NSPシリーズ』(許容定格トルク220~1146N・mの3型式、外形270㍉と344㍉)はラックアンドピニオン『TCGシリーズ』と組み合わせて使え、工作機械周辺での工程間搬送やロボット走行軸として使えます。差動式減速機『PSR/PSLシリーズ』はピン&ホール方式を採用した減速機で、ボール減速機に比べると薄くて剛性・トルクが高いのでモビリティなどの駆動ユニットでの採用が増えています」

――ここ本社工場で減速機の歯車の加工で最も重視していることは。

「当社の場合、歯車そのものが転導体と転送面となるため重要になります。歯車の歯のように動力を伝達するボールやサイクロイド溝などです。転導体は転がりながら力を伝えるので、転がる面が綺麗に仕上がるように面粗度や溝形状精度には特に注意しています」

――NSPシリーズで期待する新たな用途はありますか。

「当社が用途を明確に定めるということはせず、重量物が扱えるという特徴を生かしてマッチする様々なところでお使いいただきたいと考えます。ラックアンドピニオンは基本的にはどんなところでも使えますから。汎用性重視で、用途を絞らずという方針です。広い分野で性能がマッチするポイントごとで使ってもらうというのが当社が考える使い方になります」

――他社製品でNSPシリーズに似たものはありますか。

「減速機単品の性能や精度では似たようなものは他社製品にもありますが、NSPの強みとしましてはTCGシリーズとの併用を想定した性能と組付けに最適な製品形状ですので、この点で他社製品との差別化が図れています」

――5軸加工機はお使いになってまだ1年ほどでしたね。

「今いろいろとトライしてるところです。5軸機は立体加工が可能になるので、減速機のギアなどをつくる上で有利に働きます。たとえば3軸加工では難しかった立体的な歯形状補正も容易で、精度向上を図ることができます。その次の段階になりますが、まったく新しい形状のものもつくりたい」

――となると、5軸機の台数を増やしていくつもりですね。

「今すぐというわけではありませんが、可能性はありますね。治具などを使って3軸機で多面加工している製品は多品種あり、それを治具なしの5軸加工で効率よくつくろうとも考えています。減速機の特殊対応を数多く受けている弊社としては5軸機が増えることで多品種変量生産の対応力が上がり、より一層ユーザの要望を叶えることが出来るようになると考えています」

カラー6面減速機と歯車加工機・加茂精工P2.jpg

ボールがこのサイクロイド溝の上を転がって動力を伝える。面粗度・溝形状精度が非常に重要になるという。

加茂精工株式会社

1980年設立、社員88

愛知県豊田市御作町亀割1166

売上の7割超を占めるラックアンドピニオンを月に30004000台生産、減速機は月に約600台生産

生産拠点として本社工場(延床3700㎡)とTCG生産専用の出雲工場(島根県出雲市、1600㎡、20206月竣工)を構え、中国、韓国には販社をもつ。歯車でなくボールで動力を伝えるボール減速機は同社ならではの製品。5軸および3軸制御のMCを使った多品種変量生産で顧客の要望に柔軟に対応する。