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マーポス 営業技術部 部長 樋口 幸一 氏

ギア部品を組み込む前に解析「噛み合わせの音や振動をみる」

イタリアに本部を構え、工作機械向け測定・制御システムなどを数多く提供する。近年は同社が出展する展示会からも窺えるように、電気自動車(EV)およびそれを構成するギアを意識した製品が目につく。オンリーワン製品を中心に聞いてみた。

EVに求められるのは静粛性だと話す樋口幸一部長。肩を壊してからは野球から遠ざかり、今は専ら観るほうとお酒を飲むのが趣味に。

――最近の景況感はいかがですか。

「当社の測定機は工作機械に搭載され、インプロセスで自動測定されるものが高い比重を占めます。だから工作機械受注額の増減に割と引っ張られるところがあり、水準としては低くないものの、今は踊り場からやや下降局面にあります。ただEVや電気をつくる・貯めるという分野は世界で投資が先行しています」

――高精度・微細化が進むにつれてモノづくりに占める測定の重要性が増しています。

「そうですね。従来のマーポス製品は寸法測定が主流でしたが、今やマシンモニタリングやセンシングと、レーザーなどを用いて非接触で測定するテクノロジーをもつ会社を相次いでグループ化し、マーポスブランドで売る。あるいはその技術をマーポス製品に組み込んでいます」

――そうしてEV分野にもどんどん進出しようと。

「そういう部分もありますね。今回のトピックとしては大きく分けて2つあり、1つは工作機械向け装置、もう1つは工作機械で作られるギア向けの装置です」

――工作機械向け装置とは。

「歯車研削盤向けの測定装置です。自動車をモーターで駆動させるためギア、トランスミッション、トランスアクセルは非常に高い加工精度が求められます。燃費云々の話だけでなく音や振動を抑える必要もあります。ガソリン車なら音や振動はある程度、エンジンの音・振動でかき消されるので、エンジン部品の加工精度を上げることで燃費を良くすることが重視されました。それが電気モーターに替わると目立ってくるのが、ギアの噛み合わせの音や振動。ですから歯車研削盤で狙いどおりの高精度加工ができるように、当社としては砥石・ワークの接触のタイミングや位置関係、回転速度、加工中の音・振動をシビアに検知するセンサーを用意し、加工トータルのバランスを見ます。アンバランスだと振動など何らかのシグナルが発生します」

――売れ行きは。

「非常に多くの受注をいただいています。ホブ盤でガリガリ削るのでなく、歯車研削盤ではいくつかの工程を踏んで時間をかけて磨くので、部品を量産するにはまとまった台数が必要になります。そんな背景もあるのでしょう」

――「ギア検査用レーザーシステム」を昨秋のJIMTOFで発表されました。

「披露したシステムはプロトタイプ品で今年5月リリースとしていましたが、開発が計画より遅れており、発売はもう少し先になりそうです。今アピールしたいのはNVH歯車解析装置『NVHGEAR』(昨年発売)。NVHギアと読み、NVHとは騒音・振動・ハーシュネスのことで、ここ数年で聞かれるようになりまた」

――NVH技術をもう少し教えてください。

「エンジンと違ってモーターは0から100へと一気にトルクを上げられるので、減速機は必須です。一方で動力伝達部分はガソリン式ほど複雑な構造を必要としない。部品点数も減る。ところが、良品であるはずのギア部品を組み込んだあとでノイズが出てくることがあり、そのノイズを後から解析することは非常に難しい。要は組み込む前の単体の状態で組み込んだ状態と同じシミュレーションができるような自動検出・解析装置です」

――とても珍しい装置ですね。

「定盤の上に様々なセンサーやモーターが載せられているので大きな装置になります。ギアを載せて高速回転させて測れる装置はほかにないと思います。ただ残念ながら、日本にデモ品がなく、簡単に売れる製品ではありません。今年の10月、名古屋で開催されるメカトロテックジャパンで日本で初めて紹介します。大型モニターを使用した3Dのバーチャルになりますが、いろんな角度からズームしたりできるので実物より詳しく見られるほどです」

9面減速機と歯車加工機・マーポスP2.jpg

NVH歯車解析装置「NVHG-EAR」。ギアボックスへの組み込み前に高速、高トルクの条件下で歯車をテストすることで、表面欠陥、加工の歪み、異音の挙動を個々の部品で評価できる。

マーポス株式会社

1970年設立、社員約150

東京都大田区南馬込5-34-1

工作機械向け測定・制御システムを中心に製造販売。EV/医療/半導体新規分野へも近年注力

イタリアに本部を構え、幅広い測定、検査、試験ソリューションを提供する。この10年ほどは各専門分野に強い企業をM&Aでグループ化し、対応力を高めてきた。日本法人では機械加工中、加工後に使用する精密測定、検査およびプロセス管理システムなどを提供。EV分野に貢献する製品も充実させている。