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三甲 後藤 利彦 社長

成長続けるプラ物流機器最大手、代々続く日本的「人情経営」

豊富な製品ラインナップに、全国に69の営業所と26の製造工場を展開。顧客にジャストオンタイムで最適な製品を提供し、プラスチック物流機器における圧倒的な業界トップシェアを築いてきた三甲。代を重ねるごとに着実な成長曲線を描き続ける同社の強みを探るべく、後藤利彦社長に話を訊いた。

——国内におけるプラスチック物流機器に対する直近の需要についてお聞かせください。

「近年はeコマースの伸長などで、物流センターの案件が増えています。特に物流の自動化や省力化のお役に立てるような製品への需要が高まりました」

——各地に物流拠点が続々と誕生しています。全国に営業拠点、生産拠点を持つ強みが発揮されているのではないでしょうか。

69カ所ある営業所の1階部分はショールームになっており、お客様が直接、当社製品を手に取ってもらえるスペースにしています。実際に軽さや使いやすさといった製品の特長をじかに感じて頂けることが重要ですから。また、売れるものにも地域差があるので、展示しているものも営業所によって様々ですので、展示するものは各地の営業所長に任せています。いまは営業所ですが、より気軽に訪れてもらえるよう、いずれはショールームに名称を変えたいと考えています」

——需要家からのニーズはどのようにキャッチされているのでしょうか。

「当社の営業マンだけではカバーしきれませんので、当社製品を積極的に販売して頂いている代理店様からの情報がメインになります。代理店様にそれぞれ地元のお客様のニーズを汲み取ってもらい、その情報を元に製品開発を行っています」

——「三甲」のネームバリューによる、直需も少なくないのでは。

「大手企業様からの大口受注などは、直接お声がけ頂くケースが多いです。ただ、その場合も、該当する地域の代理店様に必ずお話を通します。当社がこれまでやってこれたのは、代理店様の多大な協力があってこそです」

——昨今、モノづくり企業の中には直販に傾くところも少なくありません。

「当社が国内でシェア高くやらせて頂いているのは、代理店様が地元のお客様をしっかりとフォローして下さっているからです。当社の営業マンには、どんな仕事でも代理店様をないがしろにするような商売はするな、と言い聞かせています。一時的に直接、仕事が取れたとしても、それが永続的に続くわけではありませんから」

——代理店との連携を深める会合も開催されていると聞きます。

「代理店様約350社に参加して頂いている『三甲会』という会があり、1月と6月の年2回、集まって頂いております。会合では当社の半期の方針や新製品の勉強会を行い、代理店様に当社の新しい製品や技術を活用した販促活動に取り組んで頂けるようにしております。先代からの『三甲会を堅持せよ』という教えもあり、私はここに全精力を傾けている、といっても過言ではありません」

■国内金型メーカーと共に

——現場の声を着実にフィードバックする製品開発力も貴社の強みのひとつです。

「現在は年間約400の新製品を上市しています。設計・開発チームは『11個新製品を』を掲げて開発に取り組んでくれています。80人ほどの部署ですので、一人当たりだいたい年間5個は新製品を手掛けています」

——それだけの新製品を作るとなると、型も相当数必要です。金型は自社製造なのでしょうか。

「自社にも金型を製造できる設備はありますが、基本的にすべて国内の金型メーカー様にお願いしています。これまで当社は金型メーカー様と一緒に仕事をすることで技術力や製品力を向上させてきました。また、かつて当社が辛い時には価格面で融通してくれた歴史もあり、持ちつ持たれつの関係で互いに成長してきました」

——金型製造をコストの安い海外に発注するといった考えは。

「当社は日本のモノづくり産業に支えて頂いているメーカーですので、今後も日本の金型メーカー様と共に歩んでいきます。昨今、他国のレベルも上がっているとは思いますが、まだ日本の技術力には及ばないと考えています」

——社長に就任されて来年で10年の節目を迎えます。就任以来、物流業界に対するニーズの変化をどう捉えていますか。

「かつてのモノづくり業界は、モノを『作る』ことにフォーカスしており、作ったモノを『運ぶ』ことにはさほど関心が無かったように思えます。それが近年、物流コスト、エネルギー価格の高騰などで『作ったモノを運べない』状況となり、経営層が物流に強く興味を示すようになってきた、と感じています。2019年あたりを境に、バラ積みが主流だった現場がパレット輸送に切り替えるケースが目立ちます」

——2024年問題など、今後さらに「運べない」ケースが増える恐れがあります。

「いまだにバラ積みが当たり前の業界も少なからずありますが、輸送効率を考えるとケースやパレットを上手に活用していかなければならないと思います。無論、導入に際して費用対効果の面もありますが、より効率的に運びやすく、エネルギーロスと環境負荷を抑制できる製品を提案していきたいですね」

——本年6月には取得が難しいSBT認証を取得するなど、サステナブルな取り組みにも注力されています。

「当社の製品はリターナブルなものが大半で、海洋プラスチックなどとは無縁なのですが、世の中の見方が『プラスチック=悪』になってしまっている側面もあります。だからこそ、自社の設備や製品は環境負荷低減に貢献できるよう、積極的に取り組んでいきます」

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豊富な製品群は1万5千点を超えるという

(2023年8月25日号掲載)