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大有 専務取締役 宮永 恭佑 氏

M&Aで設計体制を強化

マテハン機器のオーダーメイド製作を手掛ける大有は6月、群馬県高崎市にある機械設計を手掛ける松愛サービスエンジニアリング(松愛SE)を買収した。買収の狙いと買収によって見えてきたビジョンを、松愛SEの取締役を兼務する大有の宮永恭佑専務取締役に聞いた。

北関東で設計から製造、メンテまで一貫体制構築へ 

――松愛SE買収の経緯を教えてください。

「昨年5月頃にM&Aの仲介業者から松愛SEの買収について連絡があり、今年6月に買収を完了した。これまでにも様々な会社のM&Aに関する情報提供があり、企業の成長という観点からも選択肢としてあり得ないものではないと思っていた。松愛SEは機械設計を請け負う会社で、設計機能を持たない企業からの依頼や、図面の詳細化の依頼に対し、設計図面を納品してきた。当社製品の周辺機器の設計などを任せられるのではないかと感じたことから話を進めた」

――外注ではなくM&Aを選んだ理由は。

「当社は設計部門の業務負荷に課題を抱えていたが、外注に対する心理的ハードルが高かった。設計部門は自分たちが設計したモノが隣の工場でできあがり、ミスや不具合を話し合いながら製品を仕上げていくことが醍醐味。外注すると見えないところで設計が進むため抵抗感があった。しかし、今後当社の設計部門はより付加価値のある仕事ができるような体制に変えていかなければいけないと思い、設計部門が少しでも依頼しやすくなるように子会社化という選択を取った」

――現状と将来像について教えてください。

「既に設計部門から複雑ではない案件などを正式に松愛SEに依頼をし、起こされた図面や対応にフィードバックを行うなど、実務的な動きも出てきている。使用しているCADソフトが違ったので、当社のCADに合わせてもらえるようにトレーニングも開始している」

「売上の半分くらいはこれまで通りの大有以外の仕事を扱ってもらいたいと思っている。当社の仕事だけでは、当社にとってこなせる仕事の量が増えただけで、お客様に提供できる価値は変わらない。今まで松愛SEがやってきたことを引き続きやってもらうことで、大有がこれまで提供できなかった価値やこれまで手が届かなかったお客様に製品を提供できるようになることを期待している」

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松愛SEの松野敏和社長(左)と大有の田中良和社長

■松愛SEを北関東の拠点に

――松愛SE買収に伴い打ち出した「北関東ベース」について教えてください。

「『北関東ベース』は、北関東で営業、設計、製造、メンテナンスまで一貫して価値を提供することのできる拠点を目指す概念として掲げた。まずは、モノづくりのスタートである図面作成を松愛SEの買収によって対応可能な体制が整った。次のステップは松愛SEが描いた図面から製品を作ることだが、周辺地域の製缶工場にパートナーとなってもらう話が既に進んでおり、来年度中には実現すると思う。営業拠点やメンテナンス機能を持たせるにはもう5年ほどかかるとみている」

――他の営業所との違いは。

「工場を持たないが製造も含めて一貫したサービス提供を実現しようとしている点。周辺に製品づくりを外注できる工場は沢山あるため、図面が描ける松愛SEの特性と周辺のモノづくり環境を掛け合わせて製品づくりを行うことで、当社が一から工場を立ち上げるよりも迅速かつ柔軟にモノづくりを行える体制を整える」

――北関東ベースの今後の可能性について。

「エンジニアリング機能も持たせたいと思っている。様々なマテハン機器メーカーの製品をセットアップして納品する際、各メーカーから提供された製品図面をどのように配置するかを考える必要がある。その際、既に様々なマテハンメーカーと取引のある大有が松愛SEを使うことで、フラットにそれぞれの図面を繋げて生産工程図面を起こせるようにしたい。セットアップをする商社の手間を省き、取引先メーカーの製品が売れ、当社にとっても顧客接点の多様化に繋がる三方良しのビジネスモデルが構築できるのではないかとみている」

(2023年8月25日掲載)