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安田工業 代表取締役社長 安田 拓人 氏

高精度の機械づくりで、あらゆる課題解決へ

高精度で高耐久の工作機械で、国内外から引き合いが寄せられる安田工業。「最大ではなく最高を目指す」徹底した姿勢で、高精度加工を追求し強みを発揮している。  

昨年末に新たな5軸加工機を発表し、大型化する金型ニーズの領域を拡げた同社。安田拓人代表取締役社長に最近の業況と、長期間にわたり高精度加工を実現する機械づくりのこだわりを聞いた。

——最近の業況はいかがですか。

「日工会の数字を見ると全体的に受注が落ちていますが、我々も似たような形で昨年度と比べ少し落ちています。設備置き換えへの慎重な姿勢や、自動車メーカーが方向を見定めている状況が国内に停滞感をもたらしています。昨年は非常に活況だった半導体関連も、少々落ち着きが見られますね。ただEV、半導体どちらも来年度になれば少し上がる期待は持っています」

——外需の動きはいかがですか。

「エリアにも寄りますが、中国でのEV関連の引き合いは続いており、これらを受注できれば悪くはありません。アメリカは航空機や半導体に少し動きがあります。一方、欧州はもともと我々の割合として多くはないものの、半導体関連の部品加工で堅調さがやや残っており自動車向け金型にもいくらか話があります」

——昨年のJIMTOFで新しい5軸加工機を発表されました。

「『YBM Vi50』は人気がある立形5軸加工機『YBM Vi40』をサイズアップしたもの。複雑な形状が段取り替えなしで加工可能な工程集約と、工具の突き出しが短いところでも5軸であれば加工できるなど5軸加工機のニーズが徐々に増えています。また金型も大型化しつつあり、同機の上市により加工対応の領域を拡大しました」

——5軸化や金型の大型化の流れを汲んだと。

「分かれたパーツを一体化することでコストダウンを狙えますし、パーツの部品点数を減らしていこうという流れの中で金型が大型化しています。最近話題にあがるメガキャストもその流れの一つ。より大きい金型を加工できる5軸加工機としてYBM Vi50を位置づけています」

「大型で高精度というとアルミダイキャストの入れ子金型などに向きます。金型に加え、例えば半導体製造装置のチャンバーといった部品加工にも対応します。大型化と高精度を両立した強みで需要を取り込みます。最近受注を開始しましたが引き合いはいただいており、徐々に流れに乗ると期待しています」

■二つの「高精度」が導く課題解決

——今後の展望についてお聞かせください。

「引き続き高精度の加工を追求していきます。我々の言う『高精度』には2つ目的があります。一つはその言葉通り、より精度の高いものを追求すること。代表的な例では、スマホのカメラはどんどん高精細になっています。それに従いレンズに求められる精度が高くなり、枚数も増えていく。高まる精度に機械側がきちんと対応できることが重要です。高精度な加工ができるから新しい製品が生まれてくることにも繋がります」

「もう一つは、高精度な加工機は非常に安定しているということ。誰が使っても高精度に加工できます。熟練工に比べ熟練度の浅い人は出せる精度に差がある、あるいは高い精度を出すまでとても時間がかかる。誰がやっても同じように公差内に収まり、さらに言えば無人であっても精度が確保されること。高精細に対応できる非常に高い精度と、あるレベルまでの高精度加工を無人、あるいは誰がやっても同じレベルを実現する状態。我々はその2つの価値を追求します」

——人材不足と熟練工不足の解決を目指すと。

「一品物で人が段取りすることが多かった金型も自動化に向かっています。そして我々の機械は、機体温度制御システムにより工場の温度が変化しても熱変位を最小限に抑え、安定的に加工が行えます。きさげ作業を施して内部応力を解放し、経年変化による姿勢変化を防ぐなど何十年使っても高精度を保てる機械づくりをしています。また、剛性が高い機械に主軸を組み合わせることで振れが少なく、工具摩耗の点においてもメリットを発揮します。例えば40番のスピンドルで2万4000回転しても振れは1ミクロン以下。工具へのダメージを低減します」

「イニシャルコストでは高くなるかもしれませんが長期の時間軸で見ればむしろ得。コストに見合うメリットがあると判断をいただきリピーターも多いです。我々の製品を通して、世界のモノづくりをさらによい状態に持って行く。これが我々の大きなビジョンであり方向性です」

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ベストセラー機である立形5軸加工機「YBM Vi40」をサイズアップした「YBM Vi50」。金型の大型化ニーズに対応する


高精度加工をアシスト

安田社長が「使いやすさの面においても最近注力している」と紹介したのは同社独自のソフトウェア「OpeNe(オペネ)」。専用のインターフェースにより高精度加工をサポートし、機上測定をカンタンに行える。段取りの補正機能もあり、オペレーターの負担を軽減する専用インターフェースだ。

(2023年9月10日号掲載)