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ナガセインテグレックス 代表取締役社長 長瀬 幸泰 氏

超精密×生産性向上で研削は異次元に

超精密研削の草分けとして知られるナガセインテグレックスが、「異次元研削加工」を見据えている。約40年前に同社が掲げた「超精密」は今や業界の常識に。同社が次に挑むのは超精密と生産性向上の両立だ。生産性向上は耳慣れた言葉だが、中身が違うと長瀬幸泰社長は言う。「手戻りの生じる乱暴な効率化、自動化を行うのではなく、別次元の研削を目指します」

――工作機械業界が活況です。

「受注は極めて良好な状況が続いています。当社の受注が増えるのはイノベーション前夜。新技術が普及する前段階で高い加工品質が求められるためです。かつてLSIや大口径望遠鏡、高効率太陽光発電パネルの実現、液晶TVLEDへの移行時等に我々の機械が求められました。今回は自動車の構造変革が影響していると考えます」

――貴社は超精密研削の先駆けとして知られます。開発の方向性は。

「我々は40年以上前に『超精密』を掲げ、37年前に01ミクロンの分解能を持つ研削盤を開発しています。当時はまだ1ミクロンの切り込みも熟練工の技頼みだった時代。周囲から非常識と言われましたが、今ではかつて超精密と言われた加工品質が市場に定着しました。次に問われるのは、その品質をいかに高い再現性で能率よく、そして人を選ばず可能にするか。我々もそこにリソースを集中する必要があり、ポイントは研削の自動化と非熟練化。『そんな超精密加工は自動化できない・非熟練化できない』という常識に挑みます」

――精度を犠牲にせず生産性を向上させると。

「簡単に言うとお客様に利益をもたらす研削加工システムを実現します。今年のJIMTOFでもそれを実現するうえでコアとなる機械を7台展示予定。もちろん従来のナガセのマシン同様、機械の持つ運動特性を転写すれば超精密研削が可能です。かつ、高剛性化等によって加工時間を短縮する生産性の高い機械に仕立てました」

――設計手法を根本から見直す「IGTARPデザイン」のもとで斬新な機械を開発されています。出展機もその流れを汲むものですか。

7台のうち6台がIGTARPデザインに基づきます。既成概念にとらわれず理想構造を追求して大幅な省スペース化を実現し、限られたスペースで7台展示できるようになりました。モーターコアなど大型金型の加工に向く新機種のほか、新たなフラッグシップ機として2台のナノマシンを披露します。うち1台はワークを置ける面積は従来機と同等で、設置面積は10分の1。単位面積あたりの生産性が飛躍しました」

――10分の1は衝撃的です。

「従来機が大きかったのかもしれません(笑)。逆に言えば、我々自身もゴツくないとサブナノの分解能は出せないと自らの常識に縛られていたわけです。けれどIGTARPデザインでその殻を破るとこれだけコンパクトなサブナノ機ができた。絶対に驚きます。ぜひ会場でご覧下さい」

■手戻りのない自動化

――JIMTOFでは機械以外の技術も披露されますか。

「『GRINDROID』という研削の前工程を支援するアプリを披露します。これまで熟練者しかできなかった、加工要求に適する砥石やマシンの選定、加工条件などの推奨加工システムを自動で導くものです。NAGASE独自のデータベースを用いて常に複数の推奨加工システムが候補として提示され、初心者が熟練者とともにアプリを使うことで技術伝承にも有効に働きます」

――自動化に関する提案は。

「手戻りのない真の自動化を提案します。自動化=ロボット導入と言われますが、平面研削加工においてロボットでワークを加工機に供給した際、磁性式チャックで基準面を保持すると裏面の歪みの影響を受けてしまう。それでは脱磁後の精度は得られず、検査後の手戻りで生産性向上を果たせません。我々は真の自動化・生産性向上に向け開発を重ねてきましたが、1つの集大成が昨年末に納入した41工程の研削・機上計測を±1ミクロン以下の精度で自動加工する機械。ワークの供給含めすべて自動で、この機械で自動研削すれば検査後の工程戻りがない。JIMTOFでも、ワークを保持しない加工原理の研削盤とロボットを組み合わせた手戻りのない自動化をお見せします」

――来場者へ伝えたいことは。

「お伝えしたいのは可能な選択肢を自ら狭めないでほしいということ。よく機械の更新時に『これと同じことができれば良い』と15年前の機械を指されますが、10年後に今と同じ仕事はないわけです。日本のものづくりを取り巻く状況が刻一刻と変わるなか、日本で設備し日本で使う研削盤がどうあるべきか。10年後の市場を見据え、『〇〇の実現のための1台』という観点での設備選定を通じ、日本でしかできないものづくりのお役に立ちたいと思います」

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SGX-126はIGTARPデザインを用いて理想構造を追求した結果、球形を切り出したようなデザインに

(2022年9月10日号掲載)