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TAIYO 東部営業部 部長 野見山 豪 氏

柔軟なグローバルチームで顧客要望に即応

油圧シリンダ国内シェアトップのTAIYO。90年を超える歴史を持つ同社だが、2012年にParker Hannifinグループとなって以降、扱う製品だけでなく営業スタイルも大きく変わった。パーカー流の仕組みとの調和が新たな市場を開拓しつつある。

――貴社の景況感について教えてください。

「どこを起点にするかによって変わるがここ10年では微増。コロナ禍を含めた直近5年ではコロナ以前に戻ってきていて、昨年と比較しても全体数字は微増の状況」

――昨年、産業界では調整局面との声も聞かれました。

「当社は油空圧など各種シリンダを扱う単品ビジネスと装置ビジネスの2本柱。売上構成比は60%が単品ビジネスで、残り40%が装置。今年は半導体や自動車向けの製造ラインが落ち着いていたため装置ビジネスが落ち込んだが、そこを油空圧シリンダなどの単品ビジネスでカバーをしている」

――単体ビジネスで売り上げを伸ばせた理由は。

「当社がマーケットシェアを握っている油空圧シリンダは国内外ともに頭打ちの状況。ここが倍増することはあまり考えられない。2012年にParker Hannifinグループ(以下、パーカー)の傘下になったことで、パーカー製品を扱えるようになった。特に、日本市場に製造現地化(=ローカライズ)した製品の引き合いが強くある」

――製品の広がりが売り上げを押し上げている。

「パーカーは世界的に見ても最先端のモーションシステムを作り出すテクノロジー会社。数万点もの製品群があるので、お客様に提案できる商材が単純に増えたこともある。加えて、紹介する製品が油空圧シリンダ以外なのでアクセスできるマーケットも広がった。既存のお客様に対しても継ぎ手やホース、ポンプなど周辺機器も含めて、全部TAIYOから提案できるようになった」

――どういう分野で伸びている。

「シリンダは製造業で使われていないところを探す方が難しい製品。だからこそマーケット全体のシェアを伸ばす営業を行ってきた。それに対し、パーカーのローカライズ製品はターゲットとなるマーケットを絞っている。そのため特定分野が伸びているというよりも、特定のマーケットに対して当社からアプリケーションや製品の開拓を積極的に行っている」

――具体的なターゲットマーケットは。

「これからパーカーが特に注力すべき分野は『デジタル』『エレクトリフィケーション(電動化)』『クリーンテック』の3つ。日本市場でもそこに注力していく」

――どの分野も専門的な知識が必要になり営業の方は大変ですね。

「当然、営業マン一人で対応できない案件も出てくるので、パーカーでは全世界的にハイパフォーマンスチームという仕組みがある」

――ハイパフォーマンスチームとは。

「いわゆるプロジェクトチームみたいなものだが、お客様から個人の知見だけでは解決できない新しい話をいただいた時、製造現場や設計含めた関連部署から選抜されたチームで構成される。旗揚げするとそのプロジェクトに対して、部署や国関係なく人が集まりワンチームとして課題に向かう」

「従来は営業担当者と客先担当者とのやりとりであったが、現在はお客様の面着面談の際にWeb会議システムを併用し社内関係者国内外も交えたハイブリッドなコミュニケーションを行っている。課題のある現場に関係者全員が集まって話を聞くので、お客様に的確に回答をその場でお戻しでき、会社対会社のコミュニケーションをとることができる」

――面白い仕組みですね。

「お客様も人手不足や働き方改革などで11秒が惜しい。ハイパフォーマンスチームを使えば適切な人間が的確なタイミングで判断を下すことができ、問題の解決スピードを上げられる。全く新たな取り組みに対する成約率向上の秘訣だと思っている」

■建機の電動化需要を取り込む

――先ほど注力分野を挙げていただきました。その中で特に引き合いの強い製品はありますか。

「電動機器(電動シリンダ、モータ、駆動部品)の中でも高出力タイプの提案機会が増えている。油空圧シリンダの電動化は製品価格が高価であったことやバリエーションが限られていたことから、日本では比較的出力が小さいものから普及した。近年、製造現場では更なる効率化のため高速高出力な製品が求められており、当社は元々数百㌔、数㌧クラスの油圧と空圧の中間を狙って製品ラインナップを増やしてきたので、GXトレンドとも相まって置き換えを検討いただく機会が増えている」

――特に電動化要求の強い分野は。

「建機業界の電動化の動きは顕著。当社としても注力分野のエレクトリフィケーションの最大のターゲットは建機を含むモバイル(働く車)としている。建機業界では数年前から脱エンジン化の動きが盛んだったが、現在は油圧機器を電動部品に置き換える動きが出てきており、市場規模も兆円クラスになりつつある。 日本は建機のグローバルメーカーが多く、国内で生産して海外で販売しているため市場も大きい。世界をリードするパーカーのテクノロジー製品でさらに市場を盛り上げていきたい」

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建機向けでも採用が進む高出力タイプの電動シリンダ

お客様の期待値を超える

野見山部長に営業力について聞くと、「営業はお客様あってのこと。お客様の中にある期待値を超越できる人が営業力の高い人だと思っている」と話す。時には顧客さえ見えていない課題もあるが、顧客の期待する結果を知ろうとすることで、会社が持っているリソースを最大限活用しゴールを導きだすという。

非常に難しいことのように思えるが野見山部長は「ハイパフォーマンスチームもそうだが、会社のシステムが明文化されていてトレーニングもマニュアル化されている。会社としての方向性が明示・言語化されていることで従業員のマインドも変わる」と同社の営業力の源泉を語る。

2024325日号掲載)