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THK 取締役 専務執行役員 産業機器統括本部長 寺町 崇史 氏

後づけレトロフィットでIoT化する

LMガイドやボールねじ、電動アクチュエータだけでなく近年はテープレスAGV(無人搬送車)やロボットハンドなども手がけるTHK。同社が始めたIoTサービスは既存の機械設備を生かすという考えが根っこにある。2017年に竣工した真新しい本社ビルで検温ロボットに体温を計ってもらってから入館して話を聞いた。

――コロナ禍にあっても202212月期の連結売上は前期比237%増の3936億円でした。5年計画の26年度には5000億円を目指されています。

「産業機器事業については、昨年前半の受注水準は2021年に続き高かったのですが、Q3から少し軟調です。中国のゼロコロナ政策の影響や米国の金利引上げ、半導体関連の減速などの影響が出てきています。会社全体としては今年前半は厳しめ、後半は設備投資がもう少し活発化すると思います」

――部品そのものよりもIoTサービスに力点を置かれているようです。

「中長期的な成長戦略としては『ものづくり』から『ものづくりサービス業』へ転換しますと、昨年春に対外的にも宣言しました。DX(デジタルトランスフォーメーション) AIを取り込んで社内変革をしていくと同時に、当社が生み出す製品・サービスを通じてお客様のビジネス変革に貢献していきます。ただ、部品の研究開発の手を緩めるつもりはありません」

――ものづくりサービス業になるとユーザーとの接し方が変わりそうです。

「昨年秋に製品情報ページをリニューアルすると同時に、検索機能の充実やお気に入り機能の追加、そして、お客様とのコミュニケーション・プラットフォーム『OmniTHK』機能との統合を行いました。OmniTHKをはじめとしたオンラインサービスを利用してもらうことで、必要な情報をお客様が必要な時にWeb経由で入手してもらえるようになります。標準品についてはお客様で選定して、価格やリードタイムを検索してもらう。セキュアなWebアプリケーションのもとでカスタム図面の情報なども提供する。お客様と営業担当者が同じ画面を見ながら打合せもできますから求める情報に早くたどり着け、ちょっと確認してから折り返し電話します、といったやり取りをなくせます。お客様と営業担当者双方の生産性を高められます」

■餅は餅屋のIoTサービス

――製造業向けIoTサービス『OMNIedge』にも力を入れています。

OMNIedgeの成り立ちをまず説明させてください。2016年頃にインダストリー4.0が世界中に広がり始めました。今後、機械設備にはセンシングや予兆検知など様々な機能が付くようになっていくことが予見されました。当社も部品メーカーとしてデジタルサービスの具現化を考えはじめましたが、そのときトップからメッセージとしてあったのが、新しい機械設備がIoT化されるのは当たり前、それよりも、工場にすでにある機械設備をIoT化していかないとスマート工場が世界に広がるのに時間がかかりすぎる、ということでした。それで、当社のLMガイドの機能アップとしてIoT機能を付けるのではなく、すでに世の中にあるLMガイドを後づけレトロフィットしてIoT化するという考えが出来上がりました。第1弾はLMガイド、ボールねじ、アクチュエータの予兆検知。もともとTHKTはタフネス、壊れない製品をお届けするというポリシーでやってきたのですが、それでも壊れることがゼロではないので、IoTで壊れる前に知らせる。ただし、予兆検知できるだけではお客様の課題は解決しません。『OMNIedge』をご採用いただき自社製造ラインをできるだけ止めないようにしていただく。加入者の当社部品が壊れそうな際にはチケットを発行いただき、部品が届くまでの待ち時間を減らします。万一の場合のご不安については、東京海上日動さんと組んで作ったIoTリスク補償で出来るだけ取り除いていく。ここまでやるIoTサービスはなかなかないと思います。餅は餅屋だからできるサービスだと思っています」

――2弾、第3弾と続いています。

「当社がつくっていない回転部品を対象にしたサービスも加えました。特にモータやコンプレッサーのファン、ポンプなどの回転部品は工場に数多くあります。これまで保全担当者が目と耳で確認していたものをしっかり予兆検知しようと。これももちろん後づけです。昨秋のJIMTOFでは切削工具の欠損、チッピングをAIで監視するサービスを発表しました。工具交換ロス、不良・手直しロスを低減させることが狙いです。これらはロスを減らせるのでDXだけでなくGXにもつながります」

8面リレーインタビュー・THK寺町崇史専務P2.jpg

製造業向けIoTサービス「OMNIedge」

2023325日号掲載)